海外起源の外来の動植物による生態系、人の生命・身体、農林水産業への被害を防止し、生物の多様性を確保するなどの目的で2005年に施行された。問題を引き起こす外来生物を「特定外来生物」として指定し、販売や飼育、運搬、輸入といった取り扱いを規制する。現在、指定されているのは強い毒を持つ南米原産の「ヒアリ」や雑食性の淡水魚「ブルーギル」など約160種類。違反すると個人の場合、懲役3年以下または300万円以下の罰金が科される。
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海外から日本へ持ち込まれて、日本の在来生物の生存を脅かしたり、生態系を乱したり、または乱すおそれのある外来生物の取扱い規制と、あわせて外来生物の防除を行うことを定めた法律。2005年(平成17)6月1日に施行された。
この法律の制定の背景には、20世紀後半から21世紀にかけて外来生物問題への国際的な関心の高まりがあった。とくに生物多様性条約(1993年発効)では締約国に「生態系、生息地、種を脅かす外来種の導入防止、制御、撲滅」(第8条h)を義務づけ、2002年には同条約の締約国会議で「外来生物に関する指針原則」が採択されたことも見逃せない。
外来生物法は、正しくは「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」(平成16年法律第78号)という。省令によって定められた、外来生物のなかの特定外来生物が生態系に与える被害の防止に重点が置かれた法律である。なお、「生態系等」の「等」は、人命、人の身体、農林水産業であり、自然の営みである生態系とは異質の営みをさす。また、特定外来生物に生態的特徴が似ている外来生物は「未判定外来生物」とよばれ、同法で輸入の届出や制限が定められている。また、2014年の同法改正により、一部の外来生物と在来種の交雑種も特定外来生物に含めることとなった。
この法律の重要事項の一つ、特定外来生物の取扱い規制は第4条、第7条、第8条、第9条に、具体的に示されている。すなわち飼養、輸入、譲渡、放ち・植え・蒔(ま)くことは禁止。ただし、全部の行為について各条ごとに例外規定がある。たとえば、学術研究目的の輸入・飼育は許可の取得など厳しい条件つきで認められる。この点はワシントン条約の付属書Ⅰの掲載種(国際商業取引禁止)に例外規定があるのと同じである。
この法律のもう一つの重要事項は、特定外来生物の防除である。これは「捕獲、採取、または殺処分」(第11条2の3)によるが、原則として国が行うことが同条で定められている。防除については「原因者負担金」制度が設けられた(第16条)。これは特定外来生物を放したり植えたりして、防除の実施を必要とする原因になることをした者に、防除費用の全部または一部を負担させるもので、税金と同じく延滞金を徴収し、財産差押えも行われる(第17条)。外来生物法の罰則は、関連性のあるほかの法律のそれと比較すると重い。
外来生物法が、実効性を確保して、生物多様性条約に義務づけられた外来生物の導入防止、制御、撲滅に、大きな成果を収めるには、十分な予算措置と、特定外来生物の指定数を早急に、しかも大幅に増やして対処する必要がある。
[永戸豊野]
2022年(令和4)の法改正では、ヒアリを要緊急対処特定外来生物として防除する対策強化のほか、すでに国内で広く飼育されているアメリカザリガニやアカミミガメ対策のための規制手法の整備が行われた。
特定外来生物に指定されているのは7科15属4種群126種、9交雑種の全159種類(2023年9月現在)。
[編集部 2024年1月18日]
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
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