翻訳|actin
筋肉を構成するタンパク質の一つ。分子量4万1785の球状の分子で,ある条件下では重合し糸状に長く連なる。前者をGアクチン,糸状に連なった後者をFアクチンという。1942年,ハンガリーのストラウプStraub Ferenc Brunó(1914-96)によって発見された。FアクチンはGアクチンの二重らせんからなり,筋肉(骨格筋)の細いフィラメント(Iフィラメント)の主成分である。筋肉の収縮は,このフィラメントを形成するアクチンと太いフィラメント(Aフィラメント)を形成するミオシンとの間の反応によっておこる。アクチンは,筋肉以外の種々の細胞にも広く分布し,細胞分裂,アメーバ運動,原形質流動などに関与する。これらの細胞では,筋肉と異なり,アクチンはつねにFアクチンのフィラメントとして存在しているのではなく,たとえば細胞分裂の際には細胞のくびれの部分の表層に,原形質流動の際には活発に流動のみられる部分にFアクチンが多数出現する。つまり,これらの細胞では,GアクチンとFアクチン間の変換(G-F変換)が絶えずおこっていると考えられる。
→筋収縮
執筆者:杉 晴夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
筋肉細胞内の筋原繊維を構成している二つのフィラメントのうち,細いフィラメントをおもに構成している筋肉タンパク質.球状(G)と繊維状(F)の二つの型がある.F-アクチンはファロイジンで染色される.G-アクチンは Mg2+ とともに中性塩を加えるか,または溶液を弱アルカリ性か弱酸性にすると重合してF-アクチンになり,同時にG-アクチン1分子当たり1個結合していたATPがADPとなる.塩を取り去ると可逆的にG-アクチンになる.ミオシンと結合してアクトミオシンを形成しミオシンATPアーゼ活性を増大させ,ミオシンATPアーゼを Mg2+ で活性化されるATPアーゼにかえる.ウサギの骨格筋から得られたG-アクチンは分子量4.6×104 の球状タンパク質でプロリン含量が高く,7個のシステインと異常アミノ酸であるε-N-メチルリシンを1個含む.[CAS 132579-20-5]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
…すなわち生体は,常になんらかの物理的仕事に対するエネルギーの供給と共役したかたちでATPを分解するように造られており,ATPがむだに加水分解されることはない。たとえば筋肉の収縮タンパク質であるミオシンは機械的仕事と共役したATPアーゼの一つであり,反応過程におけるそれ自身の高次構造変化やアクチンとの相互作用などを通じて,ATPのエネルギーを筋収縮の仕事に変換する機能をもっている。一方,筋小胞体と呼ばれる筋肉の細胞器官の膜に大量に存在する別種のATPアーゼは,ATPの分解に先立って細胞質中のCa2+イオンを強く結合し,小胞体内のCa2+濃度が細胞質より高い場合でも,ATPの分解とともにそれを膜の内腔に輸送する性質を示す。…
…平滑筋の収縮は交感神経と副交感神経によって調節されており,一方が収縮を他方が弛緩をおこすが,そのしくみには不明な点が多い。
[脱分極と収縮との関係]
筋収縮は,筋フィラメントを形成するタンパク質アクチンとミオシン間の反応によるものであり,このエネルギー源はATPである(図2)。静止状態の筋肉では,アクチンとミオシン間の反応がトロポミオシンおよびトロポニンというタンパク質によって抑制されているので収縮はおこらない。…
※「アクチン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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