翻訳|acidosis
血液中の酸と塩基の関係が酸優位の状態、すなわち血液pHの低下をいう。酸性血症ともいう。通常、血液はその化学成分の緩衝作用と、呼吸や腎臓(じんぞう)の働きなどによってpHが非常に安定した状態に保たれている。pH7.40が正常値で、おおよそ7.36以下になるとアシドーシスとよび、7.0以下では、長く生きることはむずかしいとされる。アシドーシスは呼吸性と代謝性に2大別される。前者は二酸化炭素の蓄積によるものであり、後者は二酸化炭素以外の酸(固定酸)の蓄積または塩基の欠乏によるものである。呼吸性アシドーシスは、細胞の代謝活動の結果、絶えず産生される二酸化炭素が十分に肺から排出されないときにおこる。呼吸運動を支配している中枢の活動が低下する中枢性肺胞低換気症状群、肺におけるガス交換が障害される慢性閉塞(へいそく)性肺疾患などがこれである。二酸化炭素の蓄積が強くなると、中枢神経の麻痺(まひ)状態がおき、意識が鈍くなり、いわゆる老人ぼけの原因となることもある。代謝性アシドーシスは、脂肪の中間代謝産物であるケトン体が蓄積する糠尿病、固定酸の排泄(はいせつ)をつかさどる腎臓の機能障害などによっておこるものである。なお、アシドーシスの逆の関係(血液中の酸と塩基の関係が塩基優位の状態)をアルカローシスという。
[本田良行]
酸血症ともいい,体液中に異常に酸が蓄積するか,塩基が失われた状態をいう。体液のpHは,主として炭酸(酸性)と重炭酸(アルカリ性)の平衡による炭酸緩衝系の作用で,正常では7.4に保持されている。ところが,呼吸器の病気や呼吸中枢の機能低下により,肺の換気機能が悪くなると,血液の炭酸ガス分圧が上昇し,pHは低下する(これを呼吸性アシドーシスrespiratory acidosisという)。一方,尿毒症,糖尿病性ケトーシス,下痢,ショックなどでは,酸の産生の過剰,塩基の喪失,または酸の排出の低下が起こり,血液の重炭酸イオンが低下し,pHは低下する(これを代謝性アシドーシスmetabolic acidosisという)。アシドーシスが進行すると,意識障害,不整脈,血圧の低下など,中枢神経系,循環系の障害が起こり,死に至る。治療としては,呼吸性アシドーシスでは肺の換気機能の改善をはかること,代謝性アシドーシスでは原因疾患の治療が重要であるが,血液pHの低下が著しい場合にはアルカリ剤(炭酸水素ナトリウム)の静脈注射を行う。
執筆者:岩本 安彦
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血液中は肺や腎臓のはたらきによって中性よりややアルカリ性の状態に厳密に保たれ(この状態でちょうど細胞内が中性になる)、細胞の活動性が維持されています。この状態を逸脱して酸性に傾いていくことをアシドーシスといいます。
アシドーシスは、呼吸性アシドーシスと代謝性アシドーシスに分けることができます。呼吸性アシドーシスは、呼吸器系の疾患や呼吸中枢、呼吸筋の異常により、二酸化炭素が排出できず体内に蓄積することによって生じます。代謝性アシドーシスは体内に過剰な酸性物質が作られたり、酸性物質の排出が悪くなったり、中和するアルカリ物質が減少することによって生じます。
新生児期にアシドーシスを来す疾患は極めて多様ですが、いずれにしても何らかの治療を必要とするため、症状や検査結果などからできるだけ早く原因になっている疾患をさがす必要があります。治療として、元の疾患に対する治療が必要なことはいうまでもありませんが、呼吸性アシドーシスに対しては呼吸のサポートが必要になりますし、代謝性アシドーシスに対しては重炭酸(メイロン)による補正などが必要になります。
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
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…このように血液は,循環中に各組織で生じた余分の酸やアルカリを中和することによって,組織の環境を最適にする役を担っている。血液の緩衝能力以上の変動が生じて,血液が酸性(酸性症,アシドーシス),あるいはアルカリ性(アルカリ性症,アルカローシス)になると,組織の至適環境が乱れ,細胞が十分な機能を発揮できなくなる。酸塩基平衡
[血液型]
ヒトの赤血球の表面には凝集原とよばれる物質があり,血漿には特定の凝集原とだけ反応して赤血球に凝集をおこす凝集素が存在する。…
…呼吸機能や腎機能の異常または体内で過剰に酸が産生された場合は[HCO3-],Pの値が正常値より変位してくる。[HCO3-]/α・Pの値が小さくなるとpHが低下(酸性化)するが,そのような状態をアシドーシスといい,[HCO3-]/α・Pの値が大となりpHが高くなる状態をアルカローシスという。呼吸系に原因があって異常となる場合は呼吸性アシドーシスまたは呼吸性アルカローシスといい,腎機能の障害や過剰な酸の産生(たとえば糖尿病などの場合)で[HCO3-]が低くなっている場合を代謝性アシドーシスという。…
…体内の血液や組織液は,炭酸緩衝系の作用によって,pHはつねに一定に保たれている。弱アルカリ性であるはずの血液が酸性になる場合をアシドーシス(酸血症)というが,このようなアシドーシスは,糖尿病や飢餓時にケトン体の生成される場合(代謝性アシドーシス)にみられ,また,呼吸促進の起こる場合(呼吸性アシドーシス)にもみられるが,食べ物によってpHが変動するようなことは観察されていない。一般に,酸性食品を多く摂取する傾向にあるので,注意することが望ましいなどといわれるが,これはまちがった考え方である。…
…脂肪の利用が高まると,中間代謝産物のアセチルCoAの産生が高まり,それ以降の代謝(クエン酸回路)の処理能力を上回るため体内に蓄積し,ケトン体に変換される。ケトン体の蓄積は血液を酸性化し(アシドーシス),一部は尿中に排出される。以上のように多飲・多尿・多食・体重減少がおもな症状であるが,この状態が無治療で放置されると,多尿に飲水がおいつかず脱水状態となり,アシドーシスも高度となって昏睡状態におちいり,さらに放置すると死に至る。…
※「アシドーシス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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