英語のアジテーティング・ポイントagitating-pointの略で,非合法運動あるいは革命運動の扇動指令所。転じて,運動の秘密指令部あるいは活動家の潜伏する隠れ家を指す。元来革命運動は当然に体制権力の敵視するところとなるから,こうした運動に従事するものにとっては,不断に戦略上の拠点を移動させつつ大衆を組織していくことが必要である。その意味で,アジトを生み出したのは,革命運動と既存権力との対抗関係であった。日本でも,アジトという言葉が用いられ始めたのは,大正時代のマルクス主義運動においてであった。第2次大戦後,占領下で共産党の運動が半ば非合法化されるとともに,アジトの必要性も復活したが,その後共産党の路線転換によって,アジトはむしろ急進的新左翼運動の用語となった。そこでは,警察に対して身を隠すとともに,他のセクトからの攻撃を防ぐためにアジトが用いられた。
執筆者:都築 勉
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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