(読み)ソウ(英語表記)nest

翻訳|nest

デジタル大辞泉 「巣」の意味・読み・例文・類語

そう【巣】[漢字項目]

[音]ソウ(サウ)(漢) [訓]
学習漢字]4年
ソウ
鳥のす。「営巣燕巣えんそう帰巣性
ある物が集まっている所。「精巣病巣卵巣
隠れ家。「巣窟そうくつ賊巣
〈す〉「巣箱古巣

す【巣/×栖/×窼】

鳥・獣・虫などのすむ所。「ネズミの―」「小鳥の―」
人の住む所。すみか。「愛の―」
よくない仲間が寄り集まる場所。「悪党の―」
クモが獲物を捕まえるために張る網。
[類語]アジト隠れ家巣窟ねぐら魔窟魔境

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「巣」の意味・わかりやすい解説

巣 (す)
nest

一般には,動物がみずから造って産卵抱卵,育児または休息,就眠に使用する構造物や穴をいう。このことばは本来鳥獣を対象として用いられたと思われるが,それ以外の動物についても拡張して用いられており,巣の概念はひじょうにあいまいである。典型的な巣は多くの小鳥やキツネなどに見られるもので,繁殖期にのみ使用される。鳥類の中には,天然の穴や樹洞や他種の動物が掘った穴をそのまま利用し,しかも巣穴内になんの材料も持ち込まないで産卵するものがある。つまり,みずからは何も造らない。これは厳密にいえば単なる巣穴であって巣ではないのだが,ふつうにはこの場合も巣と呼んでいる。その一方で,ツカツクリの〈塚〉やオトシブミの〈ゆりかご〉は,上記の条件を満たしているにもかかわらず,ふつう巣とは呼ばない。

 多くの中・小型獣,とくに夜行性のものは,育児期以外にも一定の穴を隠れ場として使用するが,これもふつうには巣と呼ぶ(英語ではdenと呼んでnestと使い分ける)。繁殖期の巣がそのままこの意味の巣として使い続けられる場合もあって,ふつうにはこの区別はされないことが多い。ネズミのように同じ穴で継続して繁殖するものからモグラのように地中性のものに至ると,この区別は不可能になり,巣概念は拡張せざるをえなくなる。こうして拡張された概念はアリ,シロアリ,ミツバチなどにも適用されることになる(多くのハチの巣は繁殖用のものであるが)。このイメージはさらに干潟のカニや貝やゴカイの〈巣穴burrow〉にまで広げられている。

 また,ゴリラチンパンジーは毎日夕方に樹枝で就眠用の〈巣〉を造る(鳥についてはこのようなものは〈ねぐら〉または〈ねぐら穴〉と呼んで巣とはいわない)。このように,繁殖とは関係がなくとも,みずから造る構造物であれば巣と呼ぶことも一方では行われて,アリジゴクの巣,クモの巣web,トビケラの巣caseなどにまで概念が拡張されている。動物の中で手の込んだ顕著な巣を造るものは,哺乳類(カヤネズミ,ビーバーなど),鳥類(ハタオリドリが有名),魚類(トゲウオなど),昆虫類(シロアリ,ミツバチなど),クモ類などであるが,これらの動物が示す造巣行動(造巣技術nest-building)は古くから博物学者の注目を浴びてきた。近年になって動物行動学が改めてそれに注目してきている。彼らの造巣行動の中には,驚くほど込みいって精巧なものがあるが,そのほとんどすべてが遺伝的にプログラムされたもの(いわゆる本能的行動)であることが明らかにされている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「巣」の意味・わかりやすい解説



nest

動物が生活していく際に,1ヵ所にとどまって休息したり,出産したり,子孫を育てたりするために築いたもの。自然の洞窟,大樹の枝の間などを利用する場合もあるが,すこぶる精巧なものをつくるものも多い。土に穴を掘る,糸を吐いて葉などをまとめる,小枝を組合せるなど,あらゆる形態,性状がある。クモやアリジゴク (ウスバカゲロウの幼虫) では,巣は捕獲器の役目も兼ねる。

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