古代ギリシアの哲学者。クラゾメナイの人。アテナイの指導者ペリクレスの師友としても有名。彼は宇宙形成以前においては〈万物の種子(スペルマタspermata)〉と呼ばれる無限に多数の極微の物質が渾然一体となっていたと考えた。それらの種子はまた形,色,味,香などの点で多種多様であるが,この巨大な種子の集団に〈理性(ヌースnūs)〉が最初の一撃を与えることによって旋回運動が始まり,その運動は分裂を招き,分裂はまたあらたにさまざまの結合をもたらした。具体的な〈もの〉はこうした意味での結合体であるが,それぞれの結合体にはあらゆる種類の種子が含まれている。〈いっさい(万物)の内にはいっさいの部分(種子)がある〉。こうして,それぞれの結合体は渾沌原始の姿をとどめてはいるのだが,しかし相違はある。例えば骨や肉の相違は,骨の内には骨的種子が,肉の内には肉的種子が最も数多く含まれているからと考えたのである。
執筆者:斎藤 忍随
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古代ギリシアの哲学者。小アジアのイオニア地方の町クラゾメナイに生まれる。アテネへ移住して哲学を教えたが、ソクラテスもその講義を聴いたらしい。『ペリ・フュセオース』(自然について)とよばれる著作は散逸して、断片だけが残っている。万物のもとのもの(アルケー)はそれぞれ性質が異なる種子(スペルマタ)であって、あらゆるものはこの全種類の種子を含むが、どの種子をもっとも多く含むかによって、そのものの何であるかが決まってくる。そして、世界の初めは、これらの種子全体が入り混じり混沌(こんとん)とした状態にあったが、ヌース(精神)がこれに旋回運動を与えて分離させ、この秩序ある世界をつくりあげたというのが、その教えである。天体は大地から切り離された石であり運動のために赤熱化しているとか、大地は平板状であるとか説いたらしく日食の原因も知っていたらしい。
[鈴木幹也 2015年1月20日]
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前500頃~前428頃
アナトリア西岸のクラゾメナイ生まれの自然哲学者。約30年間アテネに住んだが,太陽は燃える石であると説いたため,親友ペリクレスの政敵から涜神(とくしん)の廉(かど)で告訴され,ヘレスポントス東北岸のランプサコスに逃れてそこで没した。
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…こうしたエレア学派の批判により,イオニアの自然学は根本的な修正を余儀なくされ,そこに多元論者が登場する。エンペドクレスやアナクサゴラスは,それぞれ,パルメニデスの〈存在〉と同様にそれ自身不変で自同的ではあるが,しかし互いに性質を異にする〈万物の四つの根〉(地,水,空気,火)や無数の〈万物の種子〉を認め,これらの離合集散によって,すべての生成変化を説明しようとした。これに対しデモクリトスは無数の質を同じくする不変な〈原子(アトム)〉が互いに形態や配置や位置を異にし,〈空虚〉のなかを運動して結合分離することにより森羅万象が生ずるとした。…
…ここで気がつくことは前6世紀,〈水〉という一者から始まったギリシア哲学が,ほぼ1000年後に少なくとも形式的には,同じ一者に帰ったという事態であり,この点にギリシア哲学全体の一つの特徴を理解する鍵があるように思われる。 たしかにタレスの〈水〉やアナクシマンドロスの〈ト・アペイロンto apeiron〉,アナクシメネスの〈空気〉を中心にした単純な一元論の哲学と,例えばエンペドクレスやアナクサゴラスの多元論,あるいはデモクリトスの原子論との間には大きな差異があるように見える。けれどもエンペドクレスの四元素の始原の状態,すなわち宇宙の第1期における状態は混然一体をなした,字義どおりの一者であったし,つづく時期に生ずる個々のものもいずれはもとの一者の状態に帰るしかけになっている。…
…訳語は明治30年代からのもので,40年代には定着し,ほかに〈複元論〉とも訳された。 一と多との対立はピタゴラス学派,クセノファネス,パルメニデスとヘラクレイトスとの対立に起源するが,多元論者の代表は哲学史上,古代では,世界を構成する地・水・火・空気の四根rizōmataの愛・憎による結合・分離を説くエンペドクレス,無数の種子spermataを精神nousが支配して濃淡・湿乾などが生じ世界を成すとするアナクサゴラス,形・大きさ・位置のみ差のある不生不滅で限りなく多数の原子atomaが,空虚kenonの中で機械的に運動して世界が生じるとするデモクリトス,さらにはエピクロスなどを挙げることができる。近世では,表象能力と欲求能力とを備えて無意識的な状態から明確な統覚を有する状態まで無数の段階を成すモナドを説くライプニッツ,近代ではその影響下にあって経験の根底に多数の実在を認め心もその一つとするJ.F.ヘルバルト,真の現実界は物質界を現象として意識する自由で個体的な多数の精神的単子から成ると説くH.ロッツェなどである。…
※「アナクサゴラス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
〘 名詞 〙 年の暮れに、その年の仕事を終えること。また、その日。《 季語・冬 》[初出の実例]「けふは大晦日(つごもり)一年中の仕事納(オサ)め」(出典:浄瑠璃・新版歌祭文(お染久松)(1780)油...
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