アパラチア造山帯(読み)あぱらちあぞうざんたい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アパラチア造山帯」の意味・わかりやすい解説

アパラチア造山帯
あぱらちあぞうざんたい

北アメリカのアパラチア山脈からニューファンドランドにかけて北東から南西方向に延びる造山帯。造山帯は一般にその延びの方向に平行な、いくつかの構造帯に分帯される。アパラチア造山帯の構造をみると、中軸部の花崗(かこう)岩や片麻(へんま)岩、結晶片岩からなる、比較的緩やかな構造をした帯から始まり、北西側の結晶片岩や弱変成岩によるナップや衝上(しょうじょう)断層を伴う変形の著しい地帯を経て、ほぼ水平な構造をもつ前縁盆地へと移り変わっている。

 一方、プレートテクトニクスの立場からアパラチア造山帯をみると、次のように考えられている。先カンブリア時代には現在の北アメリカ、グリーンランド、ヨーロッパなどは接続しており、一つの大陸を形成していた。しかし末期になって、その中に大断裂帯が形成され、そこに広がったイアペトゥス海(原大西洋)がカレドニア‐アパラチア造山帯(現在はヨーロッパとアメリカに分かれている)のもとになった堆積(たいせき)盆である。このうち、北半部のカレドニアや北部アパラチアは、古生代オルドビス紀までにヨーロッパと北アメリカが衝突して海域が閉鎖し、カレドニア造山運動や、アパラチア造山運動タコニック変動がおこって陸地が形成され、ここから多量の砕屑物(さいせつぶつ)が西方に供給された。アパラチア中央部では同様の変動が古生代デボン紀末ごろを頂点としておこった(アカディア造山運動)。そのころ南部アパラチアではまだイアペトゥス海が残っていた。この海域も石炭紀後半には、北アメリカとアフリカの衝突によってほとんど閉鎖し、アパラチア造山運動の一部としてのアレガニー造山運動がおこった。これによって超大陸としてのパンゲアが生じたのである。

岩松 暉・村田明広 2016年3月18日]


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改訂新版 世界大百科事典 「アパラチア造山帯」の意味・わかりやすい解説

アパラチア造山帯 (アパラチアぞうざんたい)
Appalachian orogenic belt

北米大陸のアパラチア山脈一帯の造山帯をいう。ここでおこった主要な地殻変動を以前はアパラチア変革Appalachian revolutionと呼び,ヨーロッパのバリスカン造山運動とほぼ同じ時期の石炭紀後期~二畳紀末におこったとされた。近年の研究では,アパラチア造山帯における地向斜堆積は原生代後期から古生代デボン紀にわたり,これらの堆積岩層に貫入した花コウ岩の形成期は(1)原生代最末期~カンブリア紀,(2)オルドビス紀~シルル紀,(3)デボン紀,(4)ペンシルベニア紀(石炭紀後期)の4回で,それぞれ変成作用を伴ったとされている。ヨーロッパでは古生代前半のカレドニア造山帯と古生代後半のバリスカン造山帯が異なる場所に分布するが,北米大陸ではアパラチア山脈一帯にカレドニア造山運動とバリスカン造山運動が重複しておこり,これらの地域を総称してアパラチア造山帯と呼ぶようになった。
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