改訂新版 世界大百科事典 「アミメニシキヘビ」の意味・わかりやすい解説
アミメニシキヘビ
reticulate python
Python reticulatus
現存の種類では世界最大のヘビ。ボア科の無毒ヘビ。ミャンマー南部,タイ,インドシナ,マレーシア,インドネシア,ニコバル諸島に分布。全長5~8m,最大記録が9.9mに達する。胴が太い割りには頭が細長く,眼が小さい。瞳孔は縦長。体鱗は細かくて胴回りに70~80列もあり滑らかで光沢がある。体背面は淡褐色か淡黄色で,黒く縁取りされた黄色または黄褐色の美しい網目模様があり,これが樹上では保護色の役割を果たしている。平地の降雨林やゴム園に生息し,人の居住区にも出没する。夜行性で,大型哺乳類や鳥類を襲って強い力で巻き締め,窒息させるが,50kgのブタをのんだ記録もある。生息地では家畜のほか,きわめてまれなケースとして子どもや女性が7~8m級の大きな個体に襲われることもある。多いものは一度に100個も産卵し,孵化(ふか)するまで雌が抱卵して保護する。この間雌はとぐろを巻いたまま頻繁に筋肉をけいれんさせるが,その摩擦熱によって,卵塊の温度は周囲よりも3~7℃ほど高まることが知られている。生まれた子ヘビは全長80cmほど。美しい斑紋をもつ皮が装飾品として大量に使用された結果,生息数が減り,地域によって保護されている。
執筆者:松井 孝爾
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報