日本大百科全書(ニッポニカ) 「アモン」の意味・わかりやすい解説
アモン(神)
あもん
Amon
古代エジプトでもっとも一般的に崇拝された神で、しばしば太陽神であるラーと結合し、アモン=ラーと記されている。アメンあるいはアムンと同じ。アモンは早期には世界創造の原動力とみなされ、勃起(ぼっき)した男根をもつ男神として表現された。ヘルモポリス(古エジプト語ヘメヌー「八つ」から)の8神に属し、アマウネトを対偶神としていた。
アモンの名は、ときにリビア・ベルベル語で「水」を意味するアマンと結び付けて解釈され、またパノポリス(古エジプト語イプ、今日のアフミーム)の地方神ミン(別名イムス、ヘムなど)と関係があるとみなされる。ラー神の場合と同じく、ミン=アモンあるいはアモン=イムスというような結合形で記されていることがあるからで、ミン神もしばしば勃起した男根をもつ男神として表されている。
この神名は、第12王朝の王名(アメン・エム・ハト=アメネムハト)、第18王朝の王名(アメン・ヘテプ=アメンヘテプ、トゥト・アンク・アメン=ツタンカーメン)などに含まれている。とりわけ第18王朝の時期(ほぼ前1550~前1350)にはアモン神の崇拝が盛んであり、アモン神官の権力が強かった。アメンヘテプ4世(イク・ン・アトン=イクナートン)は、アモン崇拝を一時的にアトン(太陽円盤)に変えたが、その死後アモン神崇拝が再興した。
[矢島文夫]