アヤニシキ(読み)あやにしき

改訂新版 世界大百科事典 「アヤニシキ」の意味・わかりやすい解説

アヤニシキ (綾錦)
Martensia denticulata Harv.

外洋に面した岩礁上のやや深所に生育する紅紫色の花がひらいたような一年生の紅藻で,コノハノリ科に所属する。体は薄い膜状で,大きさは5~20cmになる。生長すると体の周囲の細胞列は縦と横に組み合わさってしま模様をつくる。この網目構造の部分は放射状に裂けやすく,裂けてふさ状になった紅紫色の藻体が海中でゆれ動く様子は実に美しい。和名は体の美しいことに由来する。本州(関東地方以南の太平洋沿岸,中部以南の日本海沿岸),四国,九州,八丈島朝鮮半島,中国沿岸に分布する。葉書などに直接押葉して絵葉書をつくることができる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アヤニシキ」の意味・わかりやすい解説

アヤニシキ
あやにしき / 綾錦
[学] Martensia denticulata Harvey

紅藻植物、コノハノリ科の海藻。鮮紅色で、フェルト状の触感をもつ薄膜扁平(へんぺい)葉状体をなす。根部近くはすきまのない薄膜だが、上半部は編み目がはっきりとわかるレース状となる。老成体ではレースが切れ状になり、小粒の生殖器官をもつ場合が多い。暖海性で、関東以西の外海で春から夏にかけてよくみられ、海中では燐(りん)光を発して美しい。名もその美麗さに由来するが、海中から出した後は原形が崩れやすい。

[新崎盛敏]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アヤニシキ」の意味・わかりやすい解説

アヤニシキ
Martensia denticulata

藻類イギス目コノハノリ科。基部は扇を広げたような形で膜質。頂部縁辺は幅広い網状体になっている。通常は高さ5~15cm,まれに 30cmに及ぶ。軟質淡水に入れると崩壊しやすいが,台紙上に取って乾燥したものは美しい紅色の標本となる。低潮線から漸深帯の波静かな海中の岩石や他の藻類にいくつも重なって着生する。本州中部以南の沿岸,内海にみられ,南太平洋に広く分布する。

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