アラバスター(英語表記)alabaster

翻訳|alabaster

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

大理石に似た粒子の細かい白い半透明の石。その名称はエジプトの地名アラバストロンに由来するといわれる。大理石よりも軟らかく加工が容易であるため,古来より広く彫像,その他の美術,工芸品に用いられ,エジプト,ギリシアで使われた小さな香油瓶のアラバストロンなどが知られる。近代のアラバスターは鉱物学的には石膏と同義で,日本名は雪花石膏。軟らかく,色は白,黄ないし赤みを帯び,しばしば不純物によって縞目の模様ができる。人工着色が可能で熱処理により大理石に似たものとなる。主要生産国はイギリス,イタリア。ことにイタリアのものはフローレンスマーブルと呼ばれる。

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百科事典マイペディアの解説

大理石一種。古代エジプトでは王朝時代にはいってから盛んに用いられ,ツタンカーメン王の墓から出土した壺をはじめ,香油瓶(びん),装飾工芸品などすぐれたものが多い。現在のアラバスターはセッコウの一種で〈雪花セッコウ〉と訳され,白を基調とした大理石に似た石。軟らかくて容易に加工できる。

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世界大百科事典 第2版の解説

2種類あり,古代では透明感のある大理石の一種。シュメール美術エジプト美術において,彫刻や工芸品の材料として使用された。ギリシア美術では,工芸品に使用され,ヘレニズム時代からアラバスターが有する美しい透明感のゆえに小像彫刻にも用いられるようになる。ローマ時代以降も碗,壺,小像彫刻などに使用されると同時に,採光用開口部に窓ガラスの代りとして用いられている場合がある。中世の教会堂や邸宅にも同じ目的で使用されるが,ルネサンス以降はガラスにその位置を奪われ,主に装飾工芸の分野で用いられている。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

硫酸塩鉱物の一つ。雪花石膏(せっかせっこう)ともいう。石膏の微細結晶の塊状集合で、多くは白色。純粋なものは半透明。堆積(たいせき)岩中に層状をなして産し、岩塩など塩類鉱床や石油鉱床に伴われ、また石灰岩とも共存する。不純物として、粘土鉱物、方解石、硬石膏、いわゆる褐鉄鉱などを含むことがある。古代エジプトや古代ギリシアで彫像、工芸品などに用いられた。いまでもイタリアなどで、この目的で採掘されている。良質のものは彫刻用素材として珍重されるが、日本では岩塩鉱床を欠くので、この目的の使用に耐えるものはまったく産しない。命名は、エジプトの地名アラバストロンAlabastronにちなむとされる。[加藤 昭]

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精選版 日本国語大辞典の解説

〘名〙 (alabaster) 雪花石膏(せっかせっこう)。石膏の一種。半透明で縞目があり、彫刻または装飾品の素材として用いる。
※抒情歌(1932)〈川端康成〉「雪花石膏(アラバスタア)で出来てゐるかと思はれます大きい殿堂」

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世界大百科事典内のアラバスターの言及

【エジプト美術】より

…神殿には神に最も近いものとしてファラオの肖像も安置された。 彫像の材料には,セン緑岩,花コウ岩,アラバスター,石灰岩,玄武岩,片岩,石英,粘板岩などのほか,シリア方面から輸入されたシーダー(レバノン杉),サイプレス(糸杉)などの木も用いられた。金属像の大きなものは少ない。…

【石製容器】より

…エジプトでもファラオが出現する前から,旋盤で石製容器をくり抜く技術が確立しており,ゲルゼ文化では土器で石製容器の形と文様をまねたものが出現する。歴代のエジプト王朝は,乳白色のアラバスターを原材にして,独特の石製容器を生み出すが,とくにファラオのためには水晶やラピスラズリなどの貴石も選ばれた。ギリシアでも新石器時代に大理石を利用して石製容器をつくる風習はあったが,青銅器時代になるとクレタ島のミノス文明がエジプトの石製容器を模作し,交易品としてエーゲ一帯に搬出した。…

【セッコウ(石膏)】より

…透明なセッコウは透セッコウといい,宝石として用いられることがある。粒が細かく塊状のものを雪花セッコウ(アラバスター)といい,彫刻用などに用いられる。 天然産のセッコウのほかに化学工業からの副産物として多量に製出するセッコウは化学セッコウとよばれ,リン酸製造工業からのリン酸セッコウ,化学工業の副生ボウ硝とソーダ工業の塩化カルシウムからのボウ硝セッコウ,排煙中の亜硫酸ガス除去工程からの排脱セッコウ(排煙脱硫セッコウ)などがある。…

※「アラバスター」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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