翻訳|alabaster
2種類あり,古代では透明感のある大理石の一種。シュメール美術やエジプト美術において,彫刻や工芸品の材料として使用された。ギリシア美術では,工芸品に使用され,ヘレニズム時代からアラバスターが有する美しい透明感のゆえに小像彫刻にも用いられるようになる。ローマ時代以降も碗,壺,小像彫刻などに使用されると同時に,採光用開口部に窓ガラスの代りとして用いられている場合がある。中世の教会堂や邸宅にも同じ目的で使用されるが,ルネサンス以降はガラスにその位置を奪われ,主に装飾工芸の分野で用いられている。一方,近代のアラバスターはセッコウの一種である雪花セッコウであり,ロココ時代以降,工芸装飾に広く用いられた。
執筆者:青柳 正規
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硫酸塩鉱物の一つ。雪花石膏(せっかせっこう)ともいう。石膏の微細結晶の塊状集合で、多くは白色。純粋なものは半透明。堆積(たいせき)岩中に層状をなして産し、岩塩など塩類鉱床や石油鉱床に伴われ、また石灰岩とも共存する。不純物として、粘土鉱物、方解石、硬石膏、いわゆる褐鉄鉱などを含むことがある。古代エジプトや古代ギリシアで彫像、工芸品などに用いられた。いまでもイタリアなどで、この目的で採掘されている。良質のものは彫刻用素材として珍重されるが、日本では岩塩鉱床を欠くので、この目的の使用に耐えるものはまったく産しない。命名は、エジプトの地名アラバストロンAlabastronにちなむとされる。
[加藤 昭 2015年12月14日]
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…神殿には神に最も近いものとしてファラオの肖像も安置された。 彫像の材料には,セン緑岩,花コウ岩,アラバスター,石灰岩,玄武岩,片岩,石英,粘板岩などのほか,シリア方面から輸入されたシーダー(レバノン杉),サイプレス(糸杉)などの木も用いられた。金属像の大きなものは少ない。…
…エジプトでもファラオが出現する前から,旋盤で石製容器をくり抜く技術が確立しており,ゲルゼ文化では土器で石製容器の形と文様をまねたものが出現する。歴代のエジプト王朝は,乳白色のアラバスターを原材にして,独特の石製容器を生み出すが,とくにファラオのためには水晶やラピスラズリなどの貴石も選ばれた。ギリシアでも新石器時代に大理石を利用して石製容器をつくる風習はあったが,青銅器時代になるとクレタ島のミノス文明がエジプトの石製容器を模作し,交易品としてエーゲ一帯に搬出した。…
…透明なセッコウは透セッコウといい,宝石として用いられることがある。粒が細かく塊状のものを雪花セッコウ(アラバスター)といい,彫刻用などに用いられる。 天然産のセッコウのほかに化学工業からの副産物として多量に製出するセッコウは化学セッコウとよばれ,リン酸製造工業からのリン酸セッコウ,化学工業の副生ボウ硝とソーダ工業の塩化カルシウムからのボウ硝セッコウ,排煙中の亜硫酸ガス除去工程からの排脱セッコウ(排煙脱硫セッコウ)などがある。…
※「アラバスター」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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