アンギオテンシン(その他表記)angiotensin

翻訳|angiotensin

デジタル大辞泉 「アンギオテンシン」の意味・読み・例文・類語

アンギオテンシン(angiotensin)

《「アンジオテンシン」とも》肝臓から分泌されるアンギオテンシノーゲンという物質が、腎臓から分泌されるレニンによって活性化されたもの。血管を収縮させて血圧を上昇させ、さらに副腎皮質に作用してアルドステロンの分泌を促進する。

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改訂新版 世界大百科事典 「アンギオテンシン」の意味・わかりやすい解説

アンギオテンシン
angiotensin

アンギオトニン,ヒペルテンシンともいう。血管収縮などの作用をもつポリペプチド。アンギオテンシンI,II,IIIの3種が知られる。アンギオテンシンIは10個のアミノ酸からなり,肝臓で産生される糖タンパク質のアンギオテンシジンにレニンが作用してつくられる。次いでアンギオテンシンIは主として肺にある変換酵素で加水分解され,9個のアミノ酸からなるアンギオテンシンIIに,さらにアンギオテンシナーゼによって,アミノ酸8個のアンギオテンシンIIIに分解される。これらのうち,最も強い生物活性をもつのはアンギオテンシンIIで,血管収縮作用によって血圧を上昇させ,血圧を維持するとともに,アルドステロンの合成を促進させ,腎臓でのナトリウムイオンNa⁺の再吸収を促して尿量を減少させ,体液の調節を行う。アンギオテンシンは不安定な物質で,血中半減時間は1分内外にすぎないが,その濃度はレニンによって調節されている。このレニンとアンギオテンシンによってアルドステロンの分泌が調節されているところから,この調節系はレニン-アンギオテンシン系と呼ばれる。
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化学辞典 第2版 「アンギオテンシン」の解説

アンギオテンシン
アンギオテンシン
angiotensin

腎性高血圧の起因物質.1939年,I.H. Pageらは,腎臓に存在する酵素レニンで生じる血圧上昇物質をアンギオトニン(angiotonin)とよび,一方,E. Braun-Menéndezらは,同じ物質をハイパーテンシン(hypertensin)とよんだので,のちに両者を合わせてアンギオテンシンと統一して命名した.1954年にアンギオテンシンは2種類の物質であることが知られ,アンギオテンシンⅠとアンギオテンシンⅡと命名された.血清α2-グロブリン区分に含まれるタンパク質のアンギオテンシノーゲン(angiotensinogen)は,腎臓に存在するタンパク質分解酵素レニンにより,不活性のデカペプチドのアンギオテンシンⅠになり,これが血清の転換酵素により,生理的に活性なオクタペプチドのアンギオテンシンⅡになる.このアンギオテンシンⅡが,強力な血圧上昇物質で腎性高血圧の起因物質とされている.ヒトのアンギオテンシンⅡの構造は,Asp-Arg-Val-Tyr-Ile-His-Pro-Pheである.[CAS 1407-47-2]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アンギオテンシン」の意味・わかりやすい解説

アンギオテンシン
angiotensin

アンジオテンシンともいう。血圧亢進作用のある生理活性ペプチドの一つ。腎臓の糸球体付近の細胞から分泌されるレニンが,肝臓でつくられるアンギオテンシンノーゲン (レニン基質ともいう) に働き,アンギオテンシンIを生ずる。これにアンギオテンシン変換酵素が働き,活性をもったアンギオテンシン IIになり,さらに分解が進むと不活性化される。アンギオテンシンの生理活性としては,細動脈の平滑筋を収縮させて血圧を上げる作用があり,ノルアドレナリンの数十倍にも達する。また,副腎皮質の球状帯に作用して,アルドステロンの合成と遊離を促進させる。その結果,ナトリウムの貯留から循環血流がふえて血圧の上昇が起る。また,レニンに分泌が抑制される。 (→昇圧因子 )

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栄養・生化学辞典 「アンギオテンシン」の解説

アンギオテンシン

 アンギオテンシンI:DRVYIHPFHL

 アンギオテンシンII:DRVYIHPF

 アンギオテンシンIII:RVYIHPF

 アンジオテンシンともいう.アンギオテンシノーゲン(レニン基質)が,腎臓が分泌するプロテアーゼ,レニンによって分解して生成する.アンギオテンシンI,II,IIIがあり,IIは,デカペプチドであるIのC末端のHis-Leuの除かれたオクタペプチドで,強い血管収縮作用を示し血圧を上昇させる.さらに副腎に働いてアルドステロンの分泌を促し,Naを腎臓での再吸収を促進して血圧を上昇させる.IIIは,IIのN末端のAspが除かれたヘプタペプチドで,バソプレッシン分泌作用をもち,血圧を上昇させる.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のアンギオテンシンの言及

【血圧降下薬】より

…そのうち高血圧症の治療に使われるものを抗高血圧薬と呼ぶ。現在抗高血圧薬として使われているものを作用機序によって大別すると,(1)血管に作用してそれを拡張する薬物,(2)血管を支配して血管の緊張を維持している交感神経系の活性を抑えることにより血管を拡張させる薬物,(3)水とナトリウムの排出を促進して血圧を低下させる利尿降圧薬,(4)アンギオテンシン拮抗薬などがある。(1)血管に作用する薬物 血管壁の平滑筋に直接作用して弛緩させるものとしてヒドララジンが1950年代から治療に使われている。…

【腎臓】より

…電子顕微鏡で見る糸球体旁細胞は,細胞質中にオスミウム好性の大型の分泌顆粒をもち,その中にレニンを含む。レニンは血漿中のアンギオテンシノゲンにはたらき,アンギオテンシンという血圧上昇因子をつくるのに必要な一種のタンパク質分解酵素であることが知られている。尿
[腎臓の病気]
 腎臓がもつ尿排出,体液の調節,内分泌機能がなんらかの原因でおかされると,種々の症状を呈し,次のような病気が発生する。…

【ホルモン】より

…プロゲステロンを分泌するので,胎児ではプロゲステロンからコルチコステロン,アルドステロンが合成される。(13)レニン‐アンギオテンシン系のホルモン 腎臓の旁(ぼう)糸球体細胞はレニンという酵素を分泌する。これは血中のアンギオテンシノーゲンに働いて,アンギオテンシンIというアミノ酸10個のものを切り離す。…

【レニン】より

…1898年ティゲルシュテットR.Tigerstedtらはウサギの腎臓の水抽出液に血圧を上げる作用のあることを見いだし,この物質をレニンと命名した。ところがその後の研究により,レニンそのものには血圧を上げる作用はなく,レニンがタンパク質分解酵素として働いて血清タンパク質からつくられるアンギオテンシンが血圧を上げる作用のあることが明らかとなった。さらにこのアンギオテンシンにはアミノ酸10個から成るアンギオテンシンIと,これからアミノ酸1個がはずれアミノ酸9個から成るアンギオテンシンII,アミノ酸8個のアンギオテンシンIIIの3種類あり,このうち血圧を上げる活性が最も強いのはアンギオテンシンIIであることが明らかとなった。…

※「アンギオテンシン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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