民族大移動でブリタニア(グレート・ブリテン島)に移住した部族、アングル人Angles、サクソン人Saxonsの総称。ユトランド半島南部にいたゲルマン人で、シュレスウィヒ地方にアングル人、ホルシュタイン地方にサクソン人がいたといわれる。サクソン人はすでに3世紀ごろからエルベ川、ウェーザー川方面に出て、一部はライン川下流にまでも移動していた。アングル人も早くから南進してサクソン人と合流、混住して、よく似た文化、慣習をもっていた。5、6世紀にブリタニアに移住した者は、サクソン人と総称されたように、アングル人、サクソン人の区別なしに、指導力のある有力貴族のもとでそのたびごとに移住団を構成したものと思われる。彼らはウォーデン神を最高神とし、そのほかに軍神トールやティール、豊作と繁栄の神フレイ、フレイヤ女神などゲルマンの神々を信仰していた。ブリタニア移住後、ウォーデン神とイエスやマリアとの習合という形でしだいにキリスト教化されていった。移住後も、土地共同体所有を原則とし、一般自由民を基幹的階層とするメイズという血族共同体を単位として、有力な首長に指導され、主として河川沿いに開墾、定住していった。ベードン丘でブリトン人王アンブロシウス・アウレリアヌスの反撃にあいウェールズへの西進を阻まれたが、イングランドの北、中部にはアングル系王朝のバーニシア、デイラ、マーシア、イースト・アングリア、南部にはサクソン系王朝のウェセックス、サセックス、エセックスなどの王国を建設し、ジュート系のケント王国とともにヘプターキー(七王国)時代の覇権を争った。
[富沢霊岸]
イングランド人の根幹をなす民族。西ゲルマンに属するアングル人,サクソン人,ジュート人などの諸部族の融合体。民族大移動のとき,5世紀半ば以後北西ドイツ地方からブリテン島に渡り,先住のケルト人を圧迫,定着して七王国を形成した。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
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