七王国(読み)しちおうこく(英語表記)Heptarchy

精選版 日本国語大辞典 「七王国」の意味・読み・例文・類語

しち‐おうこく‥ワウコク【七王国】

  1. 中世初期イギリスアングロサクソン人のたてた七つ王国ケントサセックスイーストアングリアウェセックスエセックスマーシアノーサンブリアの七国。一種部族国家で、長く抗争を続けたが、八二九年ウェセックスのエグバートが七王国を制覇しイングランド統一の基をつくった。ヘプターキー

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改訂新版 世界大百科事典 「七王国」の意味・わかりやすい解説

七王国 (しちおうこく)
Heptarchy

5~9世紀にかけて,イングランドに渡来・定着したアングロ・サクソン人が形成した小部族王国。東南部のケント(ジュート人建国),テムズ川下流を占めたエセックス,西部に発展したウェセックス,南部のサセックス(以上サクソン族が建国),東部のイースト・アングリア,中部のマーシア,北部のノーサンブリア(以上アングル族が建国)の7国をいう。これら諸国は先住のブリトン人と戦って征服をすすめる一方,相互の間でも覇権をめぐって抗争し,6世紀末にはエゼルベルフト(エセルバート)王(在位560-616)治下のケントが有力になった。この王のもとではじめてアングロ・サクソン人のキリスト教改宗がすすめられた。次いで7世紀前半にはイースト・アングリアが一時台頭したが,同世紀半ばにはノーサンブリアが強勢を誇り,その王エドウィン(在位617-632)はスコットランドに遠征をおこなった。8世紀にはマーシアが強大となり,とくにその王オファ(在位757-796)は他の諸国に宗主権をふるっただけでなく,ウェールズとの境界に〈オファの防塁〉と呼ばれる長大な土塁を築いてブリトン人を圧迫し,またフランクのカール大帝と対立するなど,大いに威を示した。

 9世紀には,マーシアに圧せられていたウェセックスのエグバート王が勢力を増大,829年マーシアを破って七王国に覇をとなえるに至った。しかし8世紀末ごろから海上より略奪活動を開始したバイキング(デーン人)が,9世紀前半より本格的な侵入を開始した。エグバートは一時これを撃破したが,9世紀後半までには,ノーサンブリア,イースト・アングリアおよびマーシアの大半はバイキングの占領下に入った。ウェセックスのアルフレッド大王はアングロ・サクソンを率いてこれと戦い,同世紀末ようやく彼らの侵入をくいとめた。10世紀前半のウェセックス諸王はバイキングに奪われた地を回復,統一イングランド王国を形成したので,七王国の分立もここに解消した。
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百科事典マイペディア 「七王国」の意味・わかりやすい解説

七王国【しちおうこく】

中世初期イングランドに渡ったアングロ・サクソン人が建てた小部族王国。ケント,サセックス,エセックス,ウェセックス,イーストアングリア,マーシア,ノーサンブリアの7国で,Heptarchyという。6世紀以来互いに争ったが,829年ウェセックス王エグバートが他を制して覇をとなえ,統一イングランドの礎をつくった。
→関連項目アルクインイギリスウェセックスエセックスケントサセックス

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「七王国」の意味・わかりやすい解説

七王国
しちおうこく
Heptarchy

6世紀末頃から9世紀までイギリスに建設されたアングロ・サクソン諸部族の国家。ノーサンブリア,マーシア,イーストアングリア,エセックス,ケント,サセックス,ウェセックスの7国をさす。七王国 Heptarchyの語は,もともとギリシア語の「七」と「支配」に由来する。ベーダの『イギリス教会史』によれば,ケントはジュート人,イーストアングリア,マーシア,ノーサンブリアはアングル人,サセックス,エセックス,ウェセックスはサクソン人に属するとしているが,むしろ民族的にはアングロ・サクソン人として融合していたとみなすべきであろう。七王国は互いに覇を競ったが,9世紀前半ウェセックスのエグベルト王が支配権をふるうようになり,829年イングランドを統一。さらに 886年ウェセックスのアルフレッド大王はデーン人の侵入に対抗し,諸王国を最終的に統一してウェセックス王国を確立した。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「七王国」の解説

七王国(しちおうこく)
Heptarchy

グレート・ブリテン島に波状的に侵入してきたアングロ・サクソン諸族は部族国家に分裂していたが,6世紀末頃までに七つの王国にまとまりをみせた。七王国とされるのは,ケントエセックス,サセックス,ウェセックス,イースト・アングリア,マーシア,ノーサンブリア。こののち9世紀前半にウェセックス国王エグベルトによって統一され,イングランド王国が成立した。

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旺文社世界史事典 三訂版 「七王国」の解説

七王国
しちおうこく
Heptarchy

イギリスの中世初期に成立した,アングロ−サクソン族の七王国の総称。「ヘプターキー」
部族国家の形態をとり,6世紀半ばごろから9世紀前半にかけて勢力をはったサセックス・ケント・イースト−アングリア・エセックス・ノーサンブリア・マーシア・ウェセックスの7つの小国。829年ウェセックス王エグバートにより,ほぼ全イングランドが統一された。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「七王国」の意味・わかりやすい解説

七王国
しちおうこく

ヘプターキー

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世界大百科事典(旧版)内の七王国の言及

【イースト・アングリア】より

…イギリス,イングランド東部の歴史的地方名。もとは中世のアングロ・サクソン七王国の一つ,イースト・アングリア王国の支配領域を指し,地名は〈東アングル族〉を意味する。北はウォッシュ湾から南はテムズ河口にまで及び,東は北海,西はフェンランドの低地と接する広大な地域で,現在のノーフォーク州,サフォーク州を中心に,ケンブリッジシャー,エセックス両州の一部をも含む。…

【ウェセックス】より

…イギリス,イングランド南部地方の古名。もとは中世のアングロ・サクソン七王国中の一つの王国名で,ほぼ現在のハンプシャー,ワイト島,バークシャー,ウィルトシャー,ドーセット,サマーセット,エーボンの各州にまたがる領域を支配した。地名はウェスト・サクソンWest Saxon族に由来。…

※「七王国」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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