アンナカレーニナ(読み)あんなかれーにな(その他表記)Анна Каренина/Anna Karenina

デジタル大辞泉 「アンナカレーニナ」の意味・読み・例文・類語

アンナ‐カレーニナ(Anna Karenina)

レフ=トルストイ長編小説。1873~1877年に発表。愛のない結婚生活を捨てて、青年貴族との愛に生きようとした人妻アンナ悲劇生涯を、当時の貴族社会への批判を込めて描く。

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精選版 日本国語大辞典 「アンナカレーニナ」の意味・読み・例文・類語

アンナ‐カレーニナ

  1. ( 原題[ロシア語] Anna Karjenina ) 長編小説トルストイ作。一八七五~七六年に執筆。人妻アンナと、貴族将校ウロンスキーとの恋愛をめぐり、一八六〇年代のロシア貴族社会を批判的に描く。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アンナカレーニナ」の意味・わかりやすい解説

アンナ・カレーニナ
あんなかれーにな
Анна Каренина/Anna Karenina

ロシアの作家L・N・トルストイの小説。『戦争平和』に続くトルストイ第二の長編小説。1873~1877年作。農奴制度とそれに適応する旧秩序全体が崩壊した1861年以後のロシアにおける、資本のいわゆる本源的蓄積期を直接の背景として、都市と農村における貴族・地主階級の社会的・経済的没落過程やそれに伴う退廃現象を、トルストイ固有の厳格な倫理的・心理的問題提起から鋭く照らし出すことに成功している。作品に冠せられた『旧約聖書』に由来する「復讐(ふくしゅう)」に関する題銘(エピグラフ)および小説冒頭の「不幸な家庭」に関する警句(アフォリズム)は、この過渡の時代を「無慈悲に整合していく怪物」、鉄道に象徴される資本の支配に対する作者の原則的な拒絶反応によって、より深く全登場人物の運命に悲劇的な刻印を焼き付けている。

 物語は、高級官僚カレーニンと結婚して一児の母であるアンナが、兄の浮気によって崩壊しかけたオブローンスキー家へ駆けつけるため、夜汽車モスクワへ着いた朝、保線工夫の轢死(れきし)事故に際会し、同乗していた青年将校ウローンスキーがその場でエリートぶりを発揮してアンナの気をひくところから始まり、やがて彼との恋に公然と生きる道を選んだアンナが、家庭を追われ、偽善的な宗教界や社交界からはじき出されて、ひたすら孤独な愛に精神を酷使し続けた結果、転進して大土地経営に乗り出したウローンスキーの多忙な資本家的活動になじめず、ついに覚悟の鉄道自殺を遂げる場面で終わる。この筋(すじ)書きと並行して、農民との共同体的土地経営に腐心するレービンの対照的な恋愛と結婚生活が描かれるが、この心理的にまさしくトルストイ的な主人公の家庭生活にも、実兄の死や未来への安定した経済的展望の喪失から招来される精神的不安は覆いがたく、それはときとしてこの頑丈な男をも自殺への衝動に駆りたてる。貴族階級の選良たちがたどるこれら2通りのプロットは、その時代の闇(やみ)の深さを死の淵(ふち)からの体験に根ざして写しとっている。しかしながらレービンのプロットは、勤労する農民から、それなくしては生活を維持しえないところの神への信仰を獲得することによって、起死回生の道にたちえたトルストイ自身の転機をもしるしている。

[法橋和彦]

『中村融訳『アンナ・カレーニナ』全7冊(岩波文庫)』『木村浩訳『アンナ・カレーニナ』全3冊(新潮文庫)』

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改訂新版 世界大百科事典 「アンナカレーニナ」の意味・わかりやすい解説

アンナ・カレーニナ
Anna Karenina

ロシアの小説家レフ・トルストイの長編小説。1875-77年刊。女主人公アンナは,ペテルブルグの政府高官カレーニンの妻であるが,冷ややかでよそよそしい夫にあきたらず,美貌の青年将校ウロンスキーを愛するようになる。世間体よりも自分の感情を忠実に貫こうとしたアンナは,貴族社会から締め出され,愛人の愛情にも疑いをもつようになって,ついに鉄道自殺をとげる。これと対照的に描かれるのが,トルストイの分身とも言えるレービンとキティとの祝福された牧歌的な愛である。人間の愛のさまざまな様相が鋭利な心理分析によって展開される,恋愛小説中の傑作とも言えるこの作品を,同時代の批評家は,貴族社会を描いた当時流行の姦通小説という枠組みでしかみなかった。しかしドストエフスキーが指摘したように,思想性をもつすぐれた社会小説であり,農奴解放の結果生まれた大いなる社会変動を多面的に描いた時事小説でもある。日本では,瀬沼夏葉・尾崎紅葉の翻訳で初めて紹介(1902-03)されたが,冒頭の6章のみで中絶し,ついで柴田流星による英語からの抄訳(1906)があったが,本格的な翻訳は1913年の相馬御風訳を待たねばならなかった。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アンナカレーニナ」の意味・わかりやすい解説

アンナ・カレーニナ
Anna Karenina

ロシアの作家 L.トルストイの長編小説。 1873~77年作。『戦争と平和』と並ぶ作者の代表作。青年貴族ウロンスキーと姦通した人妻アンナがなぜ汽車の車輪の下に滅びざるをえなかったのか,その彼女を同じく罪深いわれわれ人間が裁くことができるのかという問題,また地主リョービンの世界の,幸福な家庭を形成するための条件とは何か,人生いかに生きるべきかの問題などをテーマにしている。アンナとウロンスキー,リョービンとキティーの相異なった世界の迫真的描写,深刻な思想表現と鋭利な心理分析により,リアリズムの極致を示し,世界文学に大きな影響を与えた。

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百科事典マイペディア 「アンナカレーニナ」の意味・わかりやすい解説

アンナ・カレーニナ

L.トルストイの長編小説。1875年―1878年作。美しい人妻アンナと青年将校ウロンスキーの姦(かん)通,女主人公の鉄道自殺に終わる悲劇を軸に,作者自身を連想させるレービンとキティの愛の物語を配し,1870年代のロシア社会を活写する。
→関連項目プリセツカヤ

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デジタル大辞泉プラス 「アンナカレーニナ」の解説

アンナ・カレーニナ〔映画:2012年〕

2012年製作のアメリカ映画。原題《Anna Karenina》。トルストイの小説の映画化。監督:ジョー・ライト、出演:キーラ・ナイトレイ、ジュード・ロウ、アーロン・テイラー=ジョンソン、ケリー・マクドナルド、ドーナル・グリーソンほか。第85回米国アカデミー賞衣装デザイン賞受賞。

アンナ・カレーニナ〔映画:1997年〕

1997年製作のイギリス・アメリカ合作映画。原題《Anna Karenina》。トルストイの小説の映画化。監督:バーナード・ローズ、出演:ソフィー・マルソー、ショーン・ビーン、アルフレッド・モリーナ、ミア・カーシュナー、ジェームズ・フォックスほか。

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旺文社世界史事典 三訂版 「アンナカレーニナ」の解説

アンナ=カレーニナ
Anna Karenina

トルストイの代表的長編小説
1873〜77年刊。19世紀のロシア文学の傑作の1つ。主人公アンナの愛と悲劇的死を通じて,貴族社会の偽善と農奴解放後の農村を的確に描いた。

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