イワナンテン(読み)いわなんてん

改訂新版 世界大百科事典 「イワナンテン」の意味・わかりやすい解説

イワナンテン (岩南天)
Leucothoe keiskei Miq.

山地日陰の崖に生えるツツジ科の常緑低木。枝を下垂して筒形の白い花を咲かせる。和名は,岩場に生え葉が南天を思わせることに由来する。木質の茎はまばらに分枝して長さ30~100cm。葉は互生し,卵形で先はとがり,まばらに鋸歯があり,長さ5~9cm,幅1.5~3cm,革質で光沢がある。夏,前年の枝の葉のわきから総状花序を伸ばし,下垂する数個の花をつける。花は長さ2cmほどで中に10本のおしべがある。葯の先には4本のとげ状突起があり,虫の体に触れて花粉を散りやすくしている。開花後,しだいに花梗が曲がって果実は上向きにつく。果実はやや扁平な球形で,各室の背面で5裂し,多数の種子をだす。関東,中部,近畿の太平洋側にのみ見られる。同じ属のハナヒリノキ類とは形が著しく異なり,中国西部に近縁種が1種あるだけの珍しい植物で,ときに観賞用に栽植される。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「イワナンテン」の意味・わかりやすい解説

イワナンテン
いわなんてん / 岩南天
[学] Leucothoe keiskei Miq.

ツツジ科(APG分類:ツツジ科)の常緑低木。葉は互生し、長卵形、長さ5~8センチメートルで先は鋭くとがり、縁(へり)に鋸歯(きょし)があり、質は厚く、光沢がある。6~7月、葉腋(ようえき)に白色で筒形の花が数個総状につき、下垂して開く。花冠は長さ1.5~2センチメートルで先は浅く5裂し、雄しべは10本。果実は扁球(へんきゅう)形、径7ミリメートルの蒴果(さくか)で、果柄の先が上に曲がる。山地の崖(がけ)に垂れて生え、本州の関東、東海、近畿地方に分布する。名は、岩場に生え、葉がナンテンの葉に似ているのでつけられた。鉢植えにする。イワナンテン属は約35種が日本、北アメリカ、南アメリカ、ヒマラヤマダガスカルに分布する。北アメリカ原産のアメリカイワナンテンL. fontanesiana (Steud.) Sleumer(L. catesbaei)は栽培されている。

小林義雄 2021年4月16日]


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百科事典マイペディア 「イワナンテン」の意味・わかりやすい解説

イワナンテン

ツツジ科の常緑小低木。本州の太平洋側山地の日当りの悪い岩地にはえる。茎は長さ30〜90cm,やや分枝してたれるものもある。葉は互生し,卵形で先がとがり,ツバキの葉のように厚く上面につやがある。夏,短い花穂をつけ,筒状で長さ1.5〜2cmの白花を下向きにつける。果実は上を向く。

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