インスタント・カメラ(読み)いんすたんとかめら(英語表記)instant camera

翻訳|instant camera

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

インスタント・カメラ
いんすたんとかめら
instant camera

撮影後、十数秒で写真ができるカメラ。アメリカのポラロイド社、日本の富士フイルム製のものがよく知られている。[伊藤詩唱]

ポラロイド

アメリカのエドウィン・H・ランドEdwin Herbert Land(1909―91)が発明し、1948年よりポラロイド社から販売されたカメラとフィルム。初期には、撮影した1分後に写真が見られるので「1分間写真」ともいわれたが、その方式は発売の前年に公表されている。「いま撮った写真をなぜすぐに見られないの?」というランドの娘の質問が発明の動機と伝えられ、現在「ポラロイド」という単語はインスタント写真の代名詞となっている。最初セピア調のモノクロームであったが、1950年に一般の写真と同様黒調となり、60年にカラーを公表し63年に発売開始、その間、仕上り時間の短縮や高感度化、カメラの自動化など改良を重ね、一般写真用以外に医療用、産業用などとして広く利用された。1972年には、これまでの「ピールアパート方式」と称するネガとポジペーパーをはがす方式にかえ、「SX‐70方式」と称するはがさない方式のフィルムを開発、75年にこの方式によるカラーを発売した。フィルムにはロールとパックタイプがあるが後者が主流で、大型カメラ用のパックもあった。[伊藤詩唱]
ピールアパート方式
ピールアパート方式のフィルムとカメラの構造の特徴は、処理剤を押し出すローラーをもつことである。モノクロフィルムは、撮影するネガフィルムと印画になるポジペーパー、処理剤の入った袋が1枚ごとに貼(は)り付けてある。撮影後(シャッターボタンを押して、一定の露出を与えたのち)、フィルムをカメラから引き出すと、ネガとポジペーパーが向き合ってローラーに圧着され、袋が破れて処理剤がネガとポジペーパーの間に一様に広がり現像される。このとき、光を受けなかったネガの部分が、ポジペーパー上に拡散転写し物理現像されるので、ネガ像とちょうど逆の明暗をもった写真がポジペーパー上にできあがる。そして気温にもよるが、15秒から30秒ぐらい、この処理が完了するのを待ち、ネガとポジペーパーをはがすとポジペーパー上に写真ができる。これを高感度銀塩拡散転写法という。カラーフィルムは、モノクロのネガフィルムに相当するフィルムが、普通のカラーフィルムと同様に3層の乳剤となっている。各乳剤層の下層に色素現像薬をもち、フィルムを引き出すとポジペーパー(受像紙)の受像層と乳剤層の間に処理剤が広がり現像される。感光した部分を色素現像薬が現像すると色素を拡散しなくなるので、感光されなかった部分の色素だけが受像層に拡散する。この処理は気温にもよるが約1分で終わり、受像紙をフィルムからはがすと、受像紙上にカラー写真ができる。これを金属錯体色素現像剤による拡散転写法という。ピールアパート方式はプロ用など一部で使われているが、現在では、以下に述べるネガとポジが一体となったものがインスタント・カメラの主流になっている。[伊藤詩唱]
SX‐70方式
SX‐70方式カメラの特徴は、ローラーと鏡をカメラ内部にもつことである。フィルムは、ピールアパート方式のネガフィルムとポジペーパーを貼り合わせたような構造で、ピールアパート方式と同様1枚ごとに処理剤の入った袋がフィルムの端に貼り付けてある。撮影後カメラからフィルムが自動的に押し出されるとき、処理剤の入った袋から、処理剤が受像層と感光乳剤層との間に押し出され、現像され、露光した面の側に写真ができあがる。しかしこのままでは左右逆の像となるので、カメラ内に鏡を置き、左右正像としている。写真ができる原理はピールアパート方式と同一である。[伊藤詩唱]
1980年代以降のポラロイド
その後ポラロイド社は、1986年「スペクトラ・システム」、88年「インパルス」(いずれもアメリカのみ)、93年「キャプティバ」(日本名「ジョイカム・システム」)などを次々と発売した。またスライド用やX線用なども発表してアメリカでは高い普及率を誇ったが、世界市場を独占するには至らなかった。しかしこれらの発明と実績はアメリカン・ドリームの一つでもあった。その後、デジタルカメラの台頭による需要減もあり、インスタントカメラ製造を中止、フィルム製造も2008年に中止した。
 なお、アメリカのコダック社も1976年にインスタント・カメラとフィルムを発売したが、86年ポラロイド社の特許に抵触していることが判明、撤退した。[伊藤詩唱]

フジ・インスタント

富士写真フイルム(2006年より富士フイルム)は1981年(昭和56)にインスタント・カメラとフィルム「フォトラマ」を発売した。処理剤を押し出すローラーをもち、内部潜像乳剤と色素放出剤による拡散転写法フィルムを使用。最初F‐10カメラとフィルムからスタートし、1984年800システムやFPシステム、および一般カメラ用フィルム単体も発売。発色性のよさからしだいにアメリカを除く各国へと普及し、科学、産業、医療の分野にも進出した。[伊藤詩唱]

1990年代以降の展開

1994年(平成6)ごろから、日本ではいわゆる「プリクラ」(インスタント写真の一種)ブームが起こり、たくさんのポートレートをアルバムに貼って持ち歩くという新しい文化が流行した。1998年には玩具(がんぐ)メーカーのトミー(現タカラトミー)が「シャオ」を発売、廉価化への道を開き、同年富士写真フイルムはカードサイズのINSTAX(インスタックス)システム「チェキ」(日本国内の通称)を発表。そのファッション性と小型軽量で廉価なことが若い人々に受け入れられて人気商品となり、プリクラに似た新しい写真文化の創造に貢献した。1999年には玩具メーカーのタカラ(現タカラトミー)がチェキのOEM(相手先ブランド生産)商品「ポケピー」を、日本ポラロイドがポラロイドブランドの「シャオ」を発売、追随した。[伊藤詩唱]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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