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インスリン製剤(読み)インスリンせいざい(英語表記)insulin preparation

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

インスリン製剤
インスリンせいざい
insulin preparation

糖尿病の治療薬として広く用いられている薬剤。インスリンはアミノ酸 21個から成るA鎖と 30個から成るB鎖がつながった蛋白質だが,従来は合成がむずかしいためブタやウシの膵臓から抽出したインスリンの製剤が用いられていた。組換え DNA技術の登場によりヒト型インスリンを大腸菌を用いて大量に生産することが可能になった。この生産技術はアメリカで確立されて,工業化に成功,1982年にアメリカとイギリスで実用化した。これは組換え DNA技術による医薬品の第1号である。日本では 86年から販売されている。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

インスリン製剤
いんすりんせいざい

血糖降下作用をもつ糖尿病の特効薬。インスリンは膵臓(すいぞう)のランゲルハンス島β(ベータ)細胞から分泌されるホルモンで、最小分子量約6000、アミノ酸が直列に結合した2本鎖からなるペプチドである。1926年に、アメリカの生理学者エーベルJ. J. Abel(1857―1938)により結晶化が成功し、1960年イギリスの生化学者サンガーF. Sangerによりアミノ酸配列がすべて解明された。
 当初医薬品として用いられたインスリンは、おもにウシまたはブタの膵臓から抽出したもので、アミノ酸の配列がヒトのインスリンとはわずかに異なるが、作用は変わらない。しかし、抗原性による副作用があることから、遺伝子組み換え技術によって大量生産できるようになったヒトインスリンのみが使われるようになった。さらに、超速効型や、持効型のインスリンアナログ製剤(インスリンの形を変えたもの)が開発され、インスリン療法は急速に進歩してきている。
 インスリンは経口投与では胃液で分解されるので、投与は主として注射(皮下)によって行われる。インスリン製剤にはその作用の発現時間および持続時間により、超速効型、速効型、中間型、持効型、持続時間の異なる2種の薬剤を混合した二相性、の製剤があり、病状に応じて使い分けられる。
 現在使用されているインスリン製剤は、速効型の遺伝子組換えヒトインスリンと、これにプロタミンを結合させた中間型のイソフェンインスリン(NPHインスリン)、そして両者の混合製剤である。インスリンアナログ製剤には、超速効型のインスリンアスパルト、インスリンリスプロ、インスリングルリジン、持効型のインスリングラルギンとインスリンデテミル、中間型として二相性インスリンアスパルトおよびインスリンリスプロと、それらとイソフェンインスリンとの混合製剤がある。インスリンおよびインスリンアナログ注射液はすべて無色透明で、イソフェンインスリンは白色の懸濁液である。
 インスリンの新しい投与法に、吸入がある。肺、気管支から直接インスリンを吸収させ、作用を発揮するもので、2006年アメリカで初めて承認されたドライパウダー型吸入インスリンがその例である。皮下注射に比べると吸収効率が低く、コストが高くつくこと、また喫煙や呼吸器疾患のある場合その効果に大きく影響することなど、安全性、有効性にさらなる観察が必要とされている。
 インスリン療法で注意すべき副作用は低血糖である。[幸保文治]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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