ランゲルハンス島(読み)らんげるはんすとう(英語表記)Langerhans islands

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ランゲルハンス島」の意味・わかりやすい解説

ランゲルハンス島
らんげるはんすとう
Langerhans islands

膵島(すいとう)ともいい、単に「ラ島」とも略記する。膵臓の組織内に島状に散在する内分泌細胞群で、19世紀のドイツの病理学者ランゲルハンスが発見し、島islands(英語)、Inseln(ドイツ語)と命名した。ランゲルハンス島直径は約50~200マイクロメートルで、その数は膵臓全体で約20万個から200万個までとされている。また、その総体積は膵臓の2%を占めるといわれる。

 ランゲルハンス島の細胞群には3種類の細胞があり、A細胞(α(アルファ)細胞)、B細胞(β(ベータ)細胞)、D細胞(δ(デルタ)細胞)に分類される。A細胞は血糖を高める作用のあるグルカゴンというホルモンを分泌する。B細胞は細胞数がもっとも多く、この細胞からはインスリンが分泌される。このホルモンはおもに肝細胞、筋細胞、脂肪細胞に作用して血液中のグルコース、脂肪酸、アミノ酸を取り入れやすいようにし、グリコーゲン、脂肪およびタンパク質の合成に役だつと考えられる。インスリンの名は、このホルモンが最初に発見されたとき、「島(ラテン語ではinsula)から分泌される」ということから名づけられたものである。インスリンは血糖値を低める働きがあり、血糖値が高まるとインスリンの分泌が促進される。したがって、B細胞の分泌が障害されると糖尿病をおこす。実験的にも、B細胞をアロキサンなどで選択的に破壊すると糖尿病をおこすことができる。

 D細胞はインスリンやグルカゴンの分泌を抑制するソマトスタチンというホルモンを分泌する。ソマトスタチンを分泌する細胞はD細胞ばかりでなく、脳の視床下部や十二指腸粘膜の細胞にも存在する。

 なお近年、免疫組織学的に、pp細胞という細胞がランゲルハンス島に存在することがみいだされた。pp細胞は膵ポリペプチドというホルモンを産生し、胃酸とかペプシノゲンの分泌、胆汁分泌の促進、腸管蠕動(ぜんどう)運動の抑制にかかわるなど、さまざまな生理作用をもつとされているが、まだ確実なことはわかっていない。

[嶋井和世]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ランゲルハンス島」の意味・わかりやすい解説

ランゲルハンス島
ランゲルハンスとう
islands of Langerhans

膵島ともいう。膵臓の中に島状に散在し,内分泌機能を果す細胞群。島を構成する細胞のうち,α細胞は血糖値を上昇させるグルカゴンというホルモンを分泌し,β細胞は血糖値を下降させるインスリンを分泌する。このβ細胞の機能不全によって糖尿病が起る。

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