日本大百科全書(ニッポニカ) 「インテルサット」の意味・わかりやすい解説
インテルサット
いんてるさっと
Intelsat, Ltd.
全世界をカバーする通信衛星システムを使用した衛星通信サービスを提供する民間の通信事業者。また、このサービスに用いられる衛星通信システム、および衛星通信回線を提供する静止衛星のことをもさす。前身は非営利の国際機関INTELSAT(インテルサット)(International Telecommunications Satellite Organization=旧、国際電気通信衛星機構)であるが、2001年7月に事業部門が分離され、民間会社として再編成された。
前身のINTELSATは、全世界をカバーする通信衛星システムの完成を目標として、アメリカが世界各国に協力を呼びかけ、1964年に、アメリカ、日本、オーストラリア、ヨーロッパ諸国など11か国が参加し、暫定的制度として国際協力体制を発足させた。1965年にはアーリーバード(1型衛星)による通信衛星の商用実験に成功し、2型衛星を経て(1966~1967年)、1968年には3型衛星の打上げに入り、グローバル衛星システムを完成した。1971年から4型衛星が打ち上げられ、1973年には48か国がインテルサット衛星を利用するようになった。INTELSATの恒久化については、数回にわたる準備委員会、全体会議ののち、1973年に「国際電気通信衛星機構(INTELSAT)に関する協定」が発効し恒久的な組織となった。
その後、民間企業による通信衛星システムの運用や急速な技術革新、競争激化など、商業衛星通信サービスを取り巻く環境が変化したことを考慮し、1998年11月に映像を中心としたサービスを提供する子会社ニュー・スカイズ・サテライツ社が設立され、現用衛星5機と建造中衛星1機を含む資産を子会社に移管。INTELSAT本体は音声・データ通信などの基本サービスを取り扱うことになった。さらに2000年11月には事業部門を民間会社に移管することが決定され、2001年7月、民間会社としてのインテルサットIntelsat, Ltd.が発足、軌道位置を含む通信衛星システムや「インテルサット」のブランドが事業会社に移管された。また、2006年、北米や中南米で直接放送衛星(DTH)サービスや企業向け通信サービス等を提供する民間の衛星通信事業者パンナムサット社PanAmSat Holding Corporationを買収し、50機以上の通信衛星を保有、運用する世界最大の衛星通信事業者となった。
[高橋陽一]