略称ITU。電気通信分野での国連専門機関の一つ。本部はジュネーブ。加盟国数は193か国(2012)。通信の設備と運用の標準化、無線通信業務別の周波数割当、衛星軌道割当、通信の世界的拡充の計画と調整が任務。現存の国際組織のなかでもっとも古く、1865年、ヨーロッパの20か国が設立した国際電信連合(万国電信連合。日本は1879年加盟)を起源とし、その後の国際無線電信連合を合体して、マドリード国際電気通信条約(1932年作成、1934年発効。日本は原加盟国)により今日のITUの形となった。第二次世界大戦後、アトランティック・シティ条約(1947年作成)および国連との協定で国連の専門機関となり、その後(1953、1959、1965、1973、1982)従前の条約を全面改訂した。このように全権委員会議のたびに新条約を採択することで、連合の法的一体性と安定性が問題となったため、ITUは、国際電気通信連合憲章と国際電気通信連合条約に二分化する改正を行った(1992年ジュネーブ会議で採択。以後、1994年、1998年、2002年、2006年に一部改正)。内部組織は複雑で、改正後は最高機関としての全権委員会議のほか、世界国際電気通信会議(国際電気通信規則の改正。開催不定期)、理事会(各地域選出、2011年時点で48か国)、事務総局に加えて、無線通信部門(ITU-R)、電気通信標準化部門(ITU-T)、電気通信開発部門(ITU-D)の3部門に分かれた各諸機関から構成される。ITUの任務は本来、技術規則作成を中心とする規制機能であるが、通信資源(周波数、静止衛星等の軌道)の合理的、公平、効果的かつ経済的な使用のための配分のほか、発展途上国への技術・経済援助等の機能をも果たすに至っている。
[山本草二・森田章夫]
電気通信に関する国際連合の専門機関で,その活動は国際電気通信連合憲章・条約に基づく。略称ITU。1865年に設立された万国電信連合と1908年に設立された国際無線電信連合が統合し,1947年に発足。2005年9月現在189ヵ国が加盟し,本部はジュネーブにある。連合の最高意思決定機関は全権委員会議で,その下に46ヵ国で構成される理事会がある。また常設機関として,事務総局,無線通信局(無線通信部門),電気通信標準化局(電気通信標準化部門),電気通信開発局(電気通信開発部門)が設置されている。連合の主要な活動は,国際的な周波数の分配,電気通信の標準化,開発途上国に対する技術協力などである。日本は1879年以来,第2次世界大戦後の一時期を除き連合の加盟国となっており,1959年以降,理事会のメンバーである。
執筆者:堀口 栄則
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国際連合と連携関係にある専門機関の一つ。1865年設立の万国電信連合を前身とし,1906年設立の国際無線電信連合を32年のマドリード国際電気通信条約により統合してITUとなった。47年に新たな条約を締結し,以後,何度も改正された。電気通信に関する国際秩序の維持のため,国際基準を設定し国際協力を促進する。本部はジュネーヴ。2006年末現在,191カ国が加盟。
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…国際通信が円滑に行われるためには,技術上および通信取扱上の各種の国際的取決めが必要である。国際的取決めには,国際電気通信連合(ITU),国際電気通信衛星機構(INTELSAT(インテルサツト))などの国際機関の条約,協定,規則,勧告,運用協定および2国間または多国間の協定などがある。日本の国際通信は法律に基づいて設立された国際電信電話(KDD)が,1953年以来,業務提供を行っていたが,1985年の電気通信事業法の制定により新規参入が認められた結果,88年より日本国際通信株式会社(ITJ)および国際ディジタル通信株式会社(IDC)も国際通信業務を提供することとなった。…
…電子情報の分野でいうと,国際標準を定めるための機関としてISO(国際標準化機構)が組織されていて,各国の国家標準機関がその構成員となっている。情報通信の分野では,国際連合の下にITU(国際電気通信連合)が組織されている。 ISOなどの国際標準機関で国際標準を制定するには,かなりの時間を要する。…
※「国際電気通信連合」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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