インド料理(読み)インドりょうり

百科事典マイペディアの解説

インド料理【インドりょうり】

インド料理の特徴の一つは,香辛料を多用することである。コショウ,赤トウガラシ,チリ,コリアンダー,カルダモン,クローブ,クミン,ナツメグ,シナモン,ターメリックなど100種を超える香辛料を適宜組み合わせ,石臼ですりつぶして用いる。このブレンドの具合で,各地方や家庭の味がきまる。これらの香辛料で味つけした煮込み料理が,広い意味でのカレー料理であり,一般に南に下るほど辛味が強い。 インド北西部はイスラム文化の影響を受けた地域で,羊肉や鶏肉の料理が多い。中でもヨーグルトと香辛料に漬け込んだ鶏肉をタンドールという土竈に入れて焼いた,タンドリー・チキンが名高い。羊の肉などを串に刺して焼いたカバーブ料理は,中近東や中央アジア一帯にみられるシャシリクと同様のものである。ヨーグルトに漬け込んだ肉を煮込んだコールマー料理はムガル風カレーともよばれ,あまり辛くはない。この地方の主食はパンで,チャパーティーナーンが食べられる。 インド南部はヒンドゥー教,西部のグジャラート地方はジャイナ教の伝統が強く,菜食料理が主流である。とりわけ各種の豆を煮込んだダールとよばれる料理と,水牛や牛の乳から作る乳製品が重要なタンパク源となっている。またベンガル湾やアラビア湾の沿岸地方では,魚を使ったカレー料理が作られ,ココナッツミルクが味つけに使われる。南部一帯は米が主食で,白いご飯にして食べる。 インドではヒンドゥー教徒が全体の8割強を占めるが,彼らは牛を神聖視して口にはせず,その他の肉食も不浄な行為として,飲酒・喫煙とともに避ける。また左手は排泄のときに使うため不浄とされ,食事には右手だけを使う。人が使ったスプーンなどより自分の指で食べるほうが清潔であるとされ,食器もバナナの葉などをそのつど使い捨てにしたりする。
→関連項目カレー

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

世界大百科事典 第2版の解説

インドりょうり【インド料理】

広大な国土と,話者人口100万人以上の言語が33もあるインド亜大陸では,食事文化の面でも,ひじょうに大きな違いがある。しかし,〈インド料理〉としての共通性は香辛料の多用ということであろう。そしてこれら香辛料で味つけした料理をカレー料理と定義するならば,インド料理のほとんどはカレー料理ということになる。香辛料は釈迦が教えてくれたものという俗説があるが,事実相当古くから使われていたらしく,玄奘の記録にも残されているという。

出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

インド料理
いんどりょうり

日本の9倍の国土、8倍強の人口をもつ広大なインド亜大陸の料理は、人種、言語、宗教、風俗の多様さのゆえに要約することはむずかしい。75%を占めるヒンドゥー教徒と、北部を中心とするイスラム教徒では食事のタブーもまったく異なる。アーリア民族の侵入に始まり、イギリスの統治に至るまで、絶えず強国の侵略の影響を受けてきた縦軸の変化と、北のカシミールと南のコモリン岬、東のコルカタ(カルカッタ)と西のムンバイ(ボンベイ)というような、気候風土の横軸の差も大きい。国土の大部分が農業地域で、しかも年々増え続ける人口を抱えるので、食糧生産と天候の問題が人々の関心事であり、食べ物と祭事の縁も非常に深い。
 しいてインド料理の特徴をまとめれば、まず香辛料を調味の主役とした、いわゆるカレー料理、食用油として欠かせないギーをはじめとする乳製品の発達、ダールと総称される乾燥豆類の利用があげられよう。
 また、食習慣のうえからは、浄・不浄を気にしてすべて右手で食物を口に運び、使い捨てのバナナの葉を皿がわりにするか、あるいは個人用のターリ(盆)と金属の小鉢ぐらいしか使わないこと、料理にコースがなく一度に出してしまうこと、などがあげられる。同じ国でありながら極端に違っている点は、イスラム教徒が羊肉、牛肉を多量に消費し、カレーの主材料としても用いながら(豚肉はタブー)、これに対しヒンドゥー教徒のとくに階層の高いものほど菜食主義者が多く、牛肉どころか鶏や卵も食べない習慣が守られていることである。タンパク質は豆と乳製品のみに頼っている。
 中国やイタリアにみられるように、インドも北部は小麦を中心とする粉食、東・南部は米食と分かれる。つまり、北部ではローティとよばれるパン類が主食で、ナーン、チャパティ、パラーター、プーリーなどがある。米は、南部では白いご飯として、汁けの多い料理をかけて食べるが、北部には明らかに中東の影響を受けたとみられるプラオとビリヤーニーという炊きこみ御飯がある。プラオはピラフと同じ作り方だが、レーズンやナッツ類とスパイスを豊富に使い、ビリヤーニーはさらに具の量が多く豪華になる。
 世界の人々に愛される料理としてはタンドーリチキンがあげられる。ヨーグルトとスパイスに一晩漬けた鶏をまるのまま、タンドールという壺(つぼ)形の土かまどで焼き上げる。タンドーリチキンをインド料理の王者とすれば、女王とよばれるのは、同じくヨーグルトに漬けて臭みを抜いた肉を、スパイスを豊富に使って煮込んだコールマーである。フランスの煮込み料理に劣らぬこくのある複雑な味は、外国人の集まる高級ホテルでも人気の的となっている。
 ムンバイやゴアなどの港湾都市、あるいは東側のベンガル地方には当然のことながら魚貝料理が発達しているが、暑い気候に比例してか、いわゆる口に熱く感じる料理が多く、トウガラシも多用される。慣れない者が食べると胃腸を壊すこともあるくらいである。南部でとくに名高いのがビンダルーで、辛味のきいたスパイスを酢とともにつぶしてペースト状にし、これに肉や魚を漬け込んでから煮たものである。
 地域によって材料は異なるが、肉や野菜を団子にしたコーフター、カテージチーズを団子にしたパニール、クレープ風の薄焼きでいろいろなものを包んで食べるドーサ、小麦粉を練って薄くのした皮に、香辛料で味つけしたラム肉やジャガイモを包んで揚げるサモサなど、インドならではの味である。豆料理では、日本のみそ汁に相当するサンバル、煎餅(せんべい)のようなパパルをはじめ、庶民の食事とは切っても切れないものが多い。バターミルクのラッシー、ヨーグルトサラダのライタなどは、トウガラシやコショウの辛味でしびれた口に、ひとときの清涼感を与えてくれる。甘い菓子には、ごく薄い金箔(きんぱく)、銀箔や花びらが添えられて華やかさを盛り上げている。[碧海酉癸]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

一代年寄

相撲界に大きな功績を残した力士に認められる年寄のことで,理事会が決定する。日本相撲協会にある 105の年寄名跡のほかに,力士名がそのまま年寄名とされる。資格は本人1代かぎりで,定年または廃業すれば自然...

続きを読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android

インド料理の関連情報