六訂版 家庭医学大全科 「ウイルス性髄膜炎」の解説
ウイルス性髄膜炎(無菌性髄膜炎)
ウイルスせいずいまくえん(むきんせいずいまくえん)
Viral meningitis (Aseptic meningitis)
(感染症)
どんな感染症か
ウイルス性髄膜炎は無菌性髄膜炎の一部を占める疾患で、エンテロウイルス属を原因とする場合が最も多く、夏期に多く認められます。
広義の無菌性髄膜炎は、髄膜炎で細菌が検出されなかった場合をいいます。無菌性髄膜炎を起こす病原体はウイルスだけでなく、マイコプラズマ、
症状の現れ方
原因ウイルスによって潜伏期、症状に違いはありますが、一般的に年長児・成人では発熱、頭痛、嘔吐を主症状とします。診察所見としては、
乳児では、発熱、不機嫌、哺乳不良など非定型的な症状で発症し、髄膜刺激症状を認めないことも多くあります。新生児の場合は、発熱、哺乳不良に加えて、
検査と診断
次に、髄液のウイルス分離、ウイルス遺伝子の検出が行われます。エンテロウイルスによる髄膜炎の場合は、便(または咽頭ぬぐい液)からのウイルス分離が原因検索に役立ちます。血液検査で中和抗体価が測定されることもあります。
エンテロウイルス属による髄膜炎は夏に流行することが多く、周囲での流行状況、その年に多く分離されているウイルスの動向などが診断の参考になります。
治療の方法
ウイルスに特異的な治療法はなく、通常は入院して対症療法を行います。髄液検査後、頭痛が改善することがよく認められます。脱水症状を示している場合は、輸液(点滴)が行われます。
新生児や乳児期早期に発症した場合は、早期診断・治療が必要です。
病気に気づいたらどうする
発熱、嘔吐、頭痛を認めた場合は、かかりつけの内科あるいは小児科を早めに受診する必要があります。乳幼児では、発熱、哺乳不良、何となく元気がないなど普段と様子が違う場合は、早めの受診が重要です。ムンプス以外は予防のためのワクチンがないため、うがい、手洗いの励行など、普段からの感染症対策が重要です。
関連項目
多屋 馨子
ウイルス性髄膜炎
ウイルスせいずいまくえん
Viral meningitis
(脳・神経・筋の病気)
どんな病気か
春から夏にかけてはエンテロウイルス、ムンプスなどによるウイルス性髄膜炎が多くみられます。通常特別な治療を必要としません。無菌性髄膜炎は本症と同義的に用いられていますが、
原因は何か
小児によく起こります。エンテロウイルス(エコー、コクサッキー)が主な病因ウイルスです。
症状の現れ方
発熱、頭痛をもって急性に発病し、
発疹などの随伴症状は、エコーウイルス、手足口病(エンテロ71)、
検査と診断
白血球数は一般的に減少傾向で、赤沈は亢進します。髄液所見は、圧の軽度上昇、約300/㎣程度の細胞増加、蛋白は軽度の増加、糖は正常となるのが特徴的です。急性期の髄液からのPCR法による各種ウイルスゲノム(遺伝子)の検出が一般化しています。併せて、抗体価検査を行う必要があります。
髄液所見、流行性の有無などを参考にし、髄液からのウイルス分離、PCR陽性、あるいは抗体価の上昇があれば病因診断を確定できます。急性期の検体からの陽性率が高いとされています。
治療の方法
発熱、頭痛などに対する対症療法が主体です。抗ウイルス薬の投与は、単純ヘルペス1、2型、水痘・帯状疱疹ウイルスによる髄膜炎に対し、アシクロビルの点滴投与を行います。一般的に良好な経過を示します。
病気に気づいたらどうする
発熱、頭痛をもって急性に発病した場合は、本症の疑いがあります。神経内科、内科、小児科の医師に相談します。
庄司 紘史
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報