日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウルメイワシ」の意味・わかりやすい解説
ウルメイワシ
うるめいわし / 潤目鰯
round herring
big-eye sardine
[学] Etrumeus teres
硬骨魚綱ニシン目ニシン科に属する海水魚。北海道以南の日本各地および朝鮮半島、中国、オーストラリア、南アフリカなどに分布する暖海性の沿岸回遊魚。全長30センチメートルに達し、体は側扁(そくへん)せず円筒形で、腹縁は丸く目は比較的大きく脂瞼(しけん)があり、死後の目の状態がどんよりしているのでこの名がある。産卵場は太平洋側では宮城県仙台湾以南、日本海側では秋田県以南の沿岸水域で、産卵期は11月から翌年6月ごろまでで、南方海域は北方海域よりも早く、期間も長い。巻網、揚繰(あぐり)網、棒受(ぼうけ)網、多鉤(たこう)釣りなどで漁獲され、日本全国で1年間にほぼ3~5万トンの比較的安定した漁獲がある。鮮魚で消費されるほか、塩干品として加工される(土佐ウルメなど)。近年、本種を含めてイワシ類を原料とした赤身魚肉の練り製品が開発されている。
[浅見忠彦]
熊本地方ではオオメイワシ、富山地方でトンボとよんでいる。高知地方ではマイワシもウルメイワシも区別しないでウルメイワシといっているが、とくに区別するときは、ウルメイワシをホンウルメ、マイワシをヒラゴといっている。なお、ウルメイワシは腹を開くと白色であるが、マイワシは黒いから両者の区別はすぐわかる。ウルメイワシはなまのままより干したほうが味がよくなるが、なまのウルメイワシは塩焼きにするほか、蒸して干し上げたものはウルメ節といい、サバ節などと同じように調味料として用いる。
[多田鉄之助]