日本大百科全書(ニッポニカ) 「マイワシ」の意味・わかりやすい解説
マイワシ
まいわし / 真鰯
Japanese pilchard
sardine
[学] Sardinops melanostictus
硬骨魚綱ニシン目ニシン科に属する海水魚。ヒラゴ、ナナツボシなどの地方名がある。全長28センチメートルに達し、体は細長く、腹部はやや側扁(そくへん)し、下あごは上あごよりわずかに突出し、両あごには微小な歯がある。鱗(うろこ)は円鱗(えんりん)ではがれやすく側線はない。体色は背側が青緑色、腹側が銀白色で、体側に一列の黒点列があり、ときにはその上下にも一列ずつの黒点がある。沿岸性の回遊魚で、日本各地の沿海に生息する。
マイワシ資源は歴史的にみて数十年を周期とする大変動を繰り返し、資源が増大したときは樺太(からふと)(サハリン)、沿海州、朝鮮半島東岸にも分布が拡大する。戦前、マイワシ漁獲の最盛期であった1930年代には年間160万トンにも達したが、その後漁獲が減少し、1965年(昭和40)には1万トンを下回った。しかしその後、太平洋側を主として産卵量の継続的な増大傾向によって資源が加速度的に回復し、1981年には日本全国で340万トンの記録的な漁獲をあげ、日本の全漁獲量の3分の1を占めるに至った。
日本周辺のマイワシは、太平洋側と東シナ海から日本海側に独立性の強い系統群が存在し、それぞれの系統群の分布域の南部に主産卵場がある。産卵期は全国的にみて11月から翌年6月までで、南方ほど産卵期が早い。卵は分離浮性。産卵水温は14~20℃。シラス、小羽(こば)、中羽(ちゅうば)、大羽(おおば)とよばれるように成長し、2年(全長20センチメートルぐらい)で大部分が成熟し産卵する。太平洋系群のマイワシを例にとると、未成魚は東北地方沿岸および沖合いを北上し、北海道近海まで回遊して索餌(さくじ)期を送り、秋期には仙台湾以南まで南下して越冬期を過ごし、その後産卵場に移るのが基本的回遊様式である。食性は、シラス期には橈脚(とうきゃく)類や小形ノープリウス幼生、成魚はおもに植物プランクトンを食べるが動物プランクトンも捕食する。
1977年の200海里体制以後、マイワシについてはこの水域内の漁業資源の利用を有効にするため、科学的調査に基づく資源評価が行われている。
[浅見忠彦]