ウロコムシ(その他表記)scale-worm

改訂新版 世界大百科事典 「ウロコムシ」の意味・わかりやすい解説

ウロコムシ (鱗虫)
scale-worm

多毛綱ウロコムシ科Polynoidaeに属する環形動物の総称広義にはホガタウロコムシ科,ノラリウロコムシ科,コガネウロコムシ科をも含めることがある。

 ウロコムシ科の大部分潮間帯の石の下や海藻の根部の間などにすんでいるが,ヒトデ類,ウニ類やウミユリ類の体の表面に付着して共生するものや,フサゴカイの棲管(せいかん)の中で共生するものもある。背体の背面両側に対になって背鱗が屋根瓦のように隔節に並ぶ。ウロコムシの名もこれによる。体は背腹に扁平で,長さ3~5cm,37~40剛毛節のものが多いが,Lepidasthenia属のもので体長10cm,130剛毛節に達するものがある。背鱗の数は12,15,18,30,37,46対などがあり,これらの数は属によって定まっている場合と,属の中でも種によってそれぞれ異なる場合がある。背鱗の形態にはさまざまあって,表面が平滑なもの,針状の突起が密生するもの,瘤状の突起が並んでいるものなどがあり,また辺縁に糸状の付属物が密生するもの,短い突起がまばらにあるものなどがある。頭部(前口葉)は前半部が2葉に分かれ,それぞれの先端がとがるものとまるいものがあり,2対の黒い眼点がある。頭部の前端に3本の感触手があり,そのうちの両側感触手が頭部の腹側から生ずる場合と先端部に続く場合とがある。体の両側にあるいぼ足は肉厚で,背鱗をもたない体節のいぼ足には1本の細長い背触糸(はいしよくし)がある。背剛毛束と腹剛毛束とがあり,剛毛の形もそれぞれ異なっている。各種の生殖法についてはよく知られていないが,マダラウロコムシでは3~4月が生殖時期であって,背中と背鱗の間に卵塊をつけ,孵化(ふか)するまで保護する。卵は淡いピンク色で,互いに透明な粘液膠着(こうちやく)されているため容易に離れることはない。雑食性で,小さな動植物やこれらの破砕物を食べる。

 日本にはウロコムシ科は45種ほど知られている。代表的なものにマダラウロコムシHarmothoe imbricata,サンハチウロコムシLepidonotus helotypus,ミロクウロコムシHalosydna brevisetosa,ナガウロコムシLepidasthenia longissimaなどがある。有用な種類はない。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウロコムシ」の意味・わかりやすい解説

ウロコムシ
うろこむし / 鱗虫
scale-worm

環形動物門多毛綱遊在目ウロコムシ科Polynoidaeの海産動物の総称。ウロコムシ類は体が扁平(へんぺい)で、背中の両側に鱗(うろこ)が対(つい)をなして並び、部分的に、または完全に背面が鱗で覆われている。また、種類によって鱗の数が12対、15対、18対、40~50対などと異なり、また鱗の表面が平滑なもの、大きな三角錐(すい)の突起が多数並んでいるものなどさまざまである。マダラウロコムシHarmothoë imbricataでは、春の生殖時期になると鱗の下面に卵をつけて保護している。一般に体長は4~5センチメートルであるが、ナガウロコムシLepidasthenia longissimaでは10センチメートル以上になる。体の両側にあるいぼ足はよく発達していて剛毛も太く、水中での歩行が巧みである。海岸の石の下などにすんでいるものが多いが、カクレウロコムシArctonoë vittataサルアワビヨメガカサガイなどの外套腔(がいとうこう)に共生し、またヒトデやウミユリと共生するもの、ほかの多毛類のフサゴカイの管の中にすむものなどがある。とくに有用な種類はないが、底魚であるカレイの胃の中からみいだされた例もあるので、魚の天然餌料(じりょう)になっているものと考えられる。

[今島 実]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ウロコムシ」の意味・わかりやすい解説

ウロコムシ
Polynoidae; scale-worm

環形動物門多毛綱遊在目ウロコムシ科に属する種類の総称。体長3~5cm。体は背腹に扁平で,背面の両側には鱗が対をなして (12,15,18,40~50対など) 並んでいる。鱗の表面は,平滑なもの,いろいろな形の突起物をもったものなどさまざまである。だいたい潮間帯の石の下などにすんでいるが,ヒトデ類やウミユリ類の体の表面について共生するものや,フサゴカイ (多毛類) の管の中で共生するものもある。マダラウロコムシ Harmothoë imbricataは,体表と鱗の間に卵をつけて保護する性質がある。日本に 45種がすんでいる。

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