エスマーク(読み)えすまーく(英語表記)Esmark, Inc.

日本大百科全書(ニッポニカ) 「エスマーク」の意味・わかりやすい解説

エスマーク
えすまーく
Esmark, Inc.

アメリカ有数の食肉製造加工会社(ミートパッカー)。スウィフト社Swift & Co.を前身として発展したが、多角化の結果、1977年エスマークに社名を変更。1980年代の企業買収戦の過程で1984年に食品会社ベアトリス・フーズに買収され、ついで、投資グループKKR(コールバーグ・クラビス・ロバーツ)がベアトリス買収ののち非食品事業は転売され、食品事業も1990年に大手食品・農産物企業コナグラ(後のコナグラ・フーズ)の一部となった。

 1855年、創業者スウィフトGustavus Franklin Swift(1839―1903)がマサチューセッツ州で生肉販売を始め、1875年から牛肉取引市場のあるシカゴに移住、1877年、生鮮肉の包装販売事業を開始、シカゴから東部市場に冷蔵貨車で生鮮肉を出荷して成功を収めた。1885年、事業を改組して資本金30万ドルでスウィフト社を設立した。同年、冷蔵船を使用してアメリカで調製した牛肉の海外販売を開始。以後数年の間に、ネブラスカ州ミズーリ州ミネソタ州テキサス州など各地に工場を展開、世界屈指の食肉製造企業に発展した。

 第二次世界大戦後は、1954年に高級七面鳥を発売するなど肉製品の拡充はもちろん、他業種にも積極的に多角化を進め、とくに1960年代以後は肥料農薬、保険、石油衣料、金融などの企業を相次いで買収、食品もピーナッツバター、スープ、チーズなどを加えた。このため1977年には社名をスウィフトの商標である「S」にちなんでエスマークに改称。同年、金融、保険サービス部門を売却し、また1980年には石油事業をモービルに売却した。その一方、1983年には大手食品企業で複合企業のノートン・サイモンを買収している。

 その後、1980年代の企業の合併・買収(M&A)ブームのさなか、1984年、エスマークはライバルの大手食品企業ベアトリスに買収された。しかし、そのベアトリスも、食品メーカーのもつ豊富な手元資金とブランドの知名度がM&Aの格好の標的となり、1986年LBO(被買収企業の資産などに依存する企業買収法)専門の投資グループKKRによって買収されたが、買収資産のうち、非食品事業は相次いで転売され、1990年にはベアトリス食品事業の大部分もコナグラに売却された。

[田口定雄]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「エスマーク」の意味・わかりやすい解説

エスマーク
Esmark, Inc.

アメリカの食品メーカーを中心とする持株会社。 1885年スウィフト・アンド・カンパニーとして食肉販売会社を設立。その後食肉加工,乳製品,油脂製品分野へ進出。さらに有力企業を次々に買収して化学,石油化学,エネルギー,家庭用品分野へと多角化し,73年持株会社となる。日本では日本ハムに技術供与して「スウィフト」ブランドの製品を販売していた。事業内容は主力子会社スウィフトが食肉,各種食肉加工品,乳製品,食用油などを製造。エステッチはリン鉱山を経営するとともに各種肥料の製造,接着剤,塗料を手がけた。またインターネーション・プレイテックスは婦人用肌着類ほか家庭用品を製造。 84年にベアトリス・フーズに買収された。

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