改訂新版 世界大百科事典 「エック」の意味・わかりやすい解説
エック
Johann Eck
生没年:1486-1543
ドイツのカトリック神学者。宗教改革のはじめから,あらゆる機会をとらえ,討論と著作によって改革者ルターに反対した。ハイデルベルク,チュービンゲン,ケルン,フライブルクなどで神学と法学を学び,人文主義の影響も受ける。1510年より死までインゴルシュタット大学神学教授。17年のルターの〈九十五ヵ条提題〉に神学的に反論した最初のひとりであり,19年にはライプチヒでカールシュタットおよびルターと神学討論(ライプチヒ討論)をしたのも有名。ルターに対する破門脅迫教勅(1520)の起草と公布に参画し,30年アウクスブルク国会のさいにはルター反対の四百四ヵ条を準備し,さらにルター派の〈アウクスブルク信仰告白〉への論駁書の起草に中心的な役割を果たした。晩年ハーゲナウ(1540),ウォルムス,レーゲンスブルク(ともに1541)の宗教会談でも,一面妥協的な態度を見せながら,決して譲ることなく,宗教改革期とそれ以後のカトリック教会の姿勢に影響を与えた。
執筆者:徳善 義和
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報