日本大百科全書(ニッポニカ) 「エネルギー自給率」の意味・わかりやすい解説
エネルギー自給率
えねるぎーじきゅうりつ
一国に必要なエネルギーのうち、自国内でまかなうことができる比率を示す指標。分母に原油、天然ガス、石炭、原子力、水力、太陽光、風力、地熱など、電気やガソリンなどに加工・転換される前の一次エネルギーの総供給量(国内の産出分と輸入分の合計)をとり、分子に国内で産出・確保できる一次エネルギー量をとって、百分率で表示する。分母に総消費量ではなく総供給量をとるのは、加工・輸送時のエネルギーロスが大きいためで、ロス分を加味して計算する。なお、原子力は、輸入ウラン燃料でも国内で再処理して繰り返し燃料として活用できるため、国際エネルギー機関(IEA)は原子力を国産エネルギーと位置づけている。
経済産業省はエネルギー自給率を「国民生活や経済活動に必要な一次エネルギーのうち、自国内で産出・確保できる比率」と定義している。エネルギー自給率は食糧自給率とならんで、安全保障上、重要な指標とされる。化石資源の乏しい日本のエネルギー自給率は、2019年(令和1)時点で、先進国が加盟する経済協力開発機構(OECD)36か国中35位と低く、国はエネルギー政策基本法(平成14年法律第71号)で、エネルギー自給率の向上を基本として施策が講じられなければならない、と定めている。
IEAによると、主要先進国のエネルギー自給率(2019年)は、水力や化石燃料の豊富なノルウェー、オーストラリア、カナダなどが100%を大きく超え、世界最大のエネルギー消費国アメリカも国内でのシェールガス開発が進んだことで104.2%に達している。イギリスは71.3%、フランスが54.4%、ドイツも34.6%であるのに対し、日本(2019年度)は12.1%にとどまる。日本のエネルギー自給率は、高度経済成長期にエネルギー消費量が急伸すると同時に石炭から石油への燃料転換が進み、1960年度(昭和35)に50%を超えていた自給率は10%台に急速に低下。石油ショック後に省エネルギー化が進み20%前後に持ち直したが、2011年(平成23)の東日本大震災による原子力発電所の停止で過去最低の6%台まで低下した。自給率向上のため、再生可能エネルギーの普及、原子力の利用、水素の活用、日本近海に埋蔵されているメタンハイドレートの開発などが課題とされている。
[矢野 武 2023年4月20日]