エノキ(読み)えのき

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

エノキ
えのき / 榎
[学]Celtis sinensis Pers.

ニレ科の落葉高木。高さ20メートル、直径1メートル以上に達し、幹は灰色。葉は互生し、ゆがんだ卵形ないし楕円(だえん)形で、上向きの2、3支脈が著しく、縁(へり)には浅い鋸歯(きょし)があり、質は厚く、長さ4~8センチメートル、幅3~5センチメートル。花は4月、新葉とともに開き、雄花と両性花をもつ。雄花は前年枝の葉腋(ようえき)に束生するか当年枝の下方あるいは葉腋に1~3個ある。雄花の花被片(かひへん)は4枚、雄しべ4本。両性花は当年枝の上部につき、花被片は4枚、雄しべ4本、雌しべ1本、花柱は2裂する。果柄は長さ1センチメートルほどで短く、果実は球形の核果で、径7ミリメートル、橙(だいだい)色に熟し、甘いので食べられる。材はやや堅く、建築材、家具、運動具、薪炭材となる。本州、四国、九州の低地に生え、朝鮮、中国南部、インドシナに分布する。名は餌(えさ)の木の意味ではないかといわれ、榎と書くのは、道端に茂って木陰をつくることから、夏の木の意味の日本字である。[伊藤浩司]
 植物学者前川文夫博士の説によれば、この木は古くは神の木として信仰の対象にされ、神が降下するという長野県諏訪(すわ)明神のタタイ木は、元来エノキであり、その名はタタイノキ→タタエノキ→エノキと変化したとする。またかつては道路の一里塚や屋敷の北西に植えられたが、これらも神木であった名残(なごり)で、東京都板橋区本町にある「縁切榎(えんきりえのき)」もその変形とする。『常陸国風土記(ひたちのくにふどき)』に名がみえ、『万葉集』にも1首詠まれている。[湯浅浩史]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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