日本大百科全書(ニッポニカ) 「エラシストラトス」の意味・わかりやすい解説
エラシストラトス
えらしすとらとす
Erasistratos
(前290ころ―?)
古代ギリシアの医師。エーゲ海のケオス島のイウリスに生まれ、一時シリアに住み、のちアレクサンドリアに移り、クニドス派の医学説を伝えた。解剖学と生理学に優れ、脳神経系統、心臓脈管系統の研究、とくに心臓弁膜の構造と機能について詳しく記述し、病理解剖学の始祖ともいわれる。ヒポクラテスのいう四元素説と液体病理説を排し、人体を粒子アトムからなると考えた。臨床上の見解では診断を重んじ、個人の体質に注意を払った。病気の治療については穏やかな方法を好んで採用して、当時、一般に広く行われていた瀉血(しゃけつ)には極端に反対した。
[大鳥蘭三郎]