エンドルフィン(読み)えんどるふぃん(英語表記)endorphin

日本大百科全書(ニッポニカ) 「エンドルフィン」の意味・わかりやすい解説

エンドルフィン
えんどるふぃん
endorphin

1976年に動物の脳内(視床下部、脳下垂体後葉)から相次いで抽出されたモルヒネペプチドで、モルヒネを代表とする麻薬性鎮痛剤の受容体であるオピエイト(アヘン剤)受容体に特異的に結合する。内因性のモルヒネ様物質endogenous morphineからエンドルフィンと名づけられた。このうち、アミノ酸5個からなるペンタペプチドをエンケファリンといい、メチオニンおよびロイシン‐エンケファリンが単離されており、エンドルフィンもα、β、γの3種が同定されている。エンドルフィンは脳下垂体に存在しホルモン様の働きをしているものとみられるが、生理的意義はよくわかっていない。鍼(はり)麻酔の機序の一つがエンドルフィンにあることが証明され、話題となった。

[幸保文治]

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百科事典マイペディア 「エンドルフィン」の意味・わかりやすい解説

エンドルフィン

広義には哺乳(ほにゅう)類の脳や脳下垂体に存在する内因性モルヒネ様神経ペプチドの総称。脳内のモルヒネ受容体に結合し,鎮痛などの作用を示す。最も活性の高いβエンドルフィンのアミノ酸配列は,脳下垂体から分泌される脂肪分解リポトロピンのカルボキシル側末端から61〜91番目のアミノ酸配列と一致する。αエンドルフィンやγエンドルフィンはこれが切断された代謝産物と考えられている。βエンドルフィンはストレスなどが加わったときに産生され,鎮痛などの作用をもたらすほか抑制性神経伝達物質としても働くとされるが,生理的意義については不明な点が多い。
→関連項目エンケファリン脳内モルヒネランナーズ・ハイ

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「エンドルフィン」の意味・わかりやすい解説

エンドルフィン
endorphin

体内性モルヒネ endogenous morphineの略称。大脳内部にありモルヒネに似た鎮痛などの作用を示す物質で,1975年スコットランドのアバディーンで心理学者 J.ヒューズと H.コスターリッツによって発見された。その後,数種のアヘン類似物質が発見され,エンドルフィンと総称されるようになった。体外からアヘン (阿片)などの供給が続くと,エンドルフィンの生産が停止され,薬物依存が起きるとされる。

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精選版 日本国語大辞典 「エンドルフィン」の意味・読み・例文・類語

エンドルフィン

〘名〙 (endorphin) 脳・脳下垂体などに含まれ、脳内のモルヒネ受容体と結合して鎮静作用を表わす一群のペプチド。

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栄養・生化学辞典 「エンドルフィン」の解説

エンドルフィン

 哺乳類の脳および下垂体に存在する内因性のオピオイドペプチドで,α,β,γの3種が知られている.

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デジタル大辞泉 「エンドルフィン」の意味・読み・例文・類語

エンドルフィン(endorphin)

脳・脳下垂体などに含まれ、脳内のモルヒネ受容体と結合して鎮静作用を表す一群のペプチド

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世界大百科事典 第2版 「エンドルフィン」の意味・わかりやすい解説

エンドルフィン【endorphin】

脳下垂体後葉に多く含まれる神経ペプチドの一種。α‐,β‐,γ‐,δ‐の4種があり,それぞれのアミノ酸配列は,脳下垂体前葉から分泌されるリポトロピンのアミノ酸配列の61~76番目(α‐エンドルフィン),61~91番目(β‐エンドルフィン),61~77番目(γ‐エンドルフィン),61~87番目(δ‐エンドルフィン)に相当する。これら4種のエンドルフィンのうち生理的に重要なのはβ‐エンドルフィンで,モルヒネ受容体に作用してモルヒネ様鎮痛作用をもつ。

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化学辞典 第2版 「エンドルフィン」の解説

エンドルフィン
エンドルフィン
endorphine

[別用語参照]オピオイド副じん皮質刺激ホルモン

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世界大百科事典内のエンドルフィンの言及

【痛み】より

…脳や脊髄にはモルヒネと特異的に結合する受容体があって,この受容体と結合する活性物質を探し求めた結果発見されたものである。メチオニンエンケファリン,ロイシンエンケファリン,β‐エンドルフィンなどがそれである。古くから痛みの治療に使われてきたはり(鍼)も痛みを和らげる脳の仕組みと無関係ではないように思われる。…

※「エンドルフィン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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