オカヒジキ(英語表記)Salsola komarovii Iljin

改訂新版 世界大百科事典 「オカヒジキ」の意味・わかりやすい解説

オカヒジキ
Salsola komarovii Iljin

古くから食用野草として利用されているアカザ科一年草。緑色の茎に円柱形で多肉の葉が互生し,海藻ヒジキミルに似ているところから名がつき,オカミル,ミルナともいう。日本の至るところの海岸砂地に自生し,また朝鮮,中国,シベリアからヨーロッパ南西部にも分布している。真夏には直径約1mの大株になり,葉腋(ようえき)に淡緑色の花をつける。秋には2枚のとげ状の苞に包まれた種子が一つあって果実となる。品種の分化はみられない。山形県特産の地方野菜で,県内陸部一帯に自給用として栽培されていたが,近年,出荷を目的に露地栽培に加えてビニルトンネル,ビニルハウスを利用した早出し栽培が行われている。生育初期の軟らかい葉と茎を摘んで食用にする。独特の風味,歯ざわりがあり,緑色を失わないようにさっとゆで,カラシあえ,酢みそあえにする。同じ科に属する食用野草にマツナがある。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

食の医学館 「オカヒジキ」の解説

オカヒジキ

《栄養と働き&調理のポイント》


 シベリア、中国、日本が原産地のアカザ科の1年草で、旬(しゅん)は夏から初秋です。
 海草のヒジキに似ていることからこの名がつきました。
 わが国では海岸の砂地に自生しており、江戸時代から食用にされています。
○栄養成分としての働き
 カロテン、ビタミンC、カリウムが豊富で、カルシウムマグネシウムといったミネラルもバランスよく含んでいます。
 カリウムは100g中680mg、カルシウムは150mg、マグネシウムは51mg含んでおり、有効なミネラル源となります。カリウムは不要なナトリウム排泄(はいせつ)するので、高血圧の予防・改善に役立ちます。
 カルシウムは、骨を丈夫にする成分です。調理の際は、ちりめんじゃこなどと煮びたしにするのがおすすめです。ビタミンDの働きでカルシウムの吸収率が高まります。
 カロテンの含有量もコマツナなみで、活性酸素を抑え、免疫力を高めてくれます。葉緑素との相乗効果で皮膚も丈夫になり、かぜをひきにくくします。

出典 小学館食の医学館について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「オカヒジキ」の意味・わかりやすい解説

オカヒジキ
おかひじき / 陸鹿尾菜
[学] Salsola komarovii Iljin

アカザ科(APG分類:ヒユ科)の一年草。茎は高さ30~40センチメートルで著しく分枝する。葉は肉質で線状円柱形、先は針状にとがり、長さ1~2.5センチメートル。花期は7~10月、花は腋生(えきせい)し無柄で淡緑色。小包葉2枚、花被(かひ)5枚、小包葉は花期後に肥厚して軟骨質となり、上部は鋭くとがる。腋果は倒円錐(えんすい)形で径2ミリメートル、中に種子1個がある。北海道、本州、四国、九州、沖縄の海岸砂地に生え、朝鮮、中国、ウスリー、樺太(からふと)(サハリン)にも分布する。若葉はゆでて食用とする。名は陸地に生えるヒジキの意味。葉がミル(ミル科の海藻)に似るので、ミルナの名もある。

[小林純子 2021年1月21日]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「オカヒジキ」の意味・わかりやすい解説

オカヒジキ

ミルナとも。アカザ科の一年草。日本全土,東アジア〜ヨーロッパ南西部に分布し,海岸の砂地などにはえる。茎は長さ30cm内外で,基部から多数枝分かれして広がり,円柱形肉質で先が針状にとがった葉を互生する。夏,葉腋に,柄のない淡黄緑色の1花をつける。花被片,おしべ各5個。若葉は食用となり,とくに山形県で栽培が盛ん。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

栄養・生化学辞典 「オカヒジキ」の解説

オカヒジキ

 [Salsola komarovii].ミルナともいう.ナデシコ目アカザ科オカヒジキ属の一年草.食用にする.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

今日のキーワード

黄砂

中国のゴビ砂漠などの砂がジェット気流に乗って日本へ飛来したとみられる黄色の砂。西日本に多く,九州西岸では年間 10日ぐらい,東岸では2日ぐらい降る。大陸砂漠の砂嵐の盛んな春に多いが,まれに冬にも起る。...

黄砂の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android