各地の気候風土に根差し、古くから栽培されている野菜の在来種。明確な定義はないが、独自に基準を設け、地元の特産品として売り込んでいる自治体もある。独特の香りや甘み、ふぞろいな大きさや個性的な形が特徴で、地域の食文化とも密接に関わってきた。1年を通して店頭に並ぶ量産性のある改良品種と違い、旬の時期にだけ収穫される。生産が途絶え、絶滅したものもある。
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特定の地域や場所で古くからつくられてきた野菜。同じ地域で長く採取を繰り返し、寒さや暑さといった気候条件や虫害などに耐えるうちに、その土地での生育に適応してきた品種であり、限定された地域内では、安定した収穫が期待できる。香り、えぐみ、苦味、甘味といった風味をはじめ、形も独特になったものが多い。野菜にはもともと全国各地に固有の品種がみられたが、1960年代なかばごろから効率的に周年安定生産できるような品種への改良が進んだため、地域固有の品種は生産量が激減した。
しかし近年、味に特徴があり、郷土料理や土産物(みやげもの)として使われるなど地域の食文化との関連も深いために食材としての付加価値が高く、話題性もあることから、中小規模の農家などで伝統野菜に対する関心が高まっている。京野菜(京都府)や加賀野菜(石川県)、なにわの伝統野菜(大阪府)、飛騨・美濃(ひだみの)伝統野菜(岐阜県)などが有名である。東京近辺では、大正期以前につくられていた伝統野菜を、JA東京中央会が2011年(平成23)に「江戸東京野菜」として商標登録し、練馬大根や馬込三寸人参(まごめさんすんにんじん)など、およそ30品種を認証している。伝統野菜としては、ダイコンだけでも、京都の聖護院(しょうごいん)大根、東京の細長い練馬大根、加賀(石川県)の煮物に適した源助(げんすけ)大根、宮崎県産で赤紫と白の2種類がある糸巻き大根など、多様な品種がみられる。
[編集部]
(中島富美子 フード・ジャーナリスト / 2007年)
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