世論形成に重要な役割を演ずる人物をいう。人々は自分の意見を形成するにあたって、信頼できる人物に情報や助言を求め、参考にする傾向をもっている。広義には、産業界の、○○町の、あるいは日本のオピニオン・リーダーというように、特定の分野、地域社会、あるいは社会全体において、それが当面する重要な問題を喚起し、人々の意見形成に影響を与え、世論を動かす人物をいう。狭義には、社会学用語として、地域社会あるいは集団において、特定の問題に対して他の人々よりも強い興味と関心を寄せ、詳しい情報を所有する人物をいう。問題ないしは情報の領域ごとに、オピニオン・リーダーは存在する。地域社会や集団において新しい情報(イノベーションあるいは新しいアイデア)が浸透する際には、これらのリーダーが媒介の作用を演ずる。情報がオピニオン・リーダーを媒介にして社会的に伝達され、影響力を発揮する過程を、「コミュニケーションの二段階(ないしは多段階)の流れ」という。
現代のように、マス・コミュニケーションが発達した状況のもとでは、情報はマス・メディアから直接的に一般の人々に伝達される。しかし、その情報をどのように判断し、解釈し、そして行動すればよいかの情報は、マス・メディアから得られないことが多い。マス・メディアにかわって、一般の人々に助言や判断を与える人物がオピニオン・リーダーである。彼らは、社会における情報の影響力の流れを担う人物であり、問題ないしは情報の分野ごとに異なるところから「水平的オピニオン・リーダー」とよばれ、広義のオピニオン・リーダー(垂直的オピニオン・リーダー)から区別される。
[藤竹 暁]
『E・カッツ、P・F・ラザースフェルド著、竹内郁郎訳『パーソナル・インフルエンス』(1965・培風館)』▽『E・M・ロジャース著、藤竹暁訳『技術革新の普及過程』(1966・培風館)』
日常的なトピック(流行,買物,選挙など)に関して,周囲の人々の意思決定に対人的な影響を及ぼす人。1940年のアメリカ大統領選挙の際に,投票行動の調査を実施したラザースフェルドP.F.Lazarsfeldらによって名づけられた。影響を受ける相手はフォロアーと呼ばれる。オピニオン・リーダーは社会的地位や階層の点でフォロアーと同質的な存在であり,したがって彼らの影響は,全社会的規模での指導者や専門家による上から下への〈垂直的リーダーシップ〉とは異なり,〈水平的リーダーシップ〉として行使される。また,近代的な社会では,少数の人間が多くのトピックにわたって重複的にリーダーになることは少なく,トピックごとに,そのトピックに対する関心が比較的高く,マス・メディアなど外部の情報源によく接触している人がリーダーと認められるのがふつうである。オピニオン・リーダーの影響力は,彼らが所属する集団の外部からの情報や影響を,助言や示唆という形で,フォロアーとしての集団成員に仲介するという,〈中継機能〉に由来するところが大きい。
執筆者:竹内 郁郎
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… ところが1960年前後になると,マスコミ研究者の間から,〈弾丸理論〉見直しの動きが強まった。なかでも有力だったのがパーソナル・コミュニケーションの実態調査をふまえたラザースフェルドらの〈2段階の流れ論〉で,マスコミはまずオピニオン・リーダーに受け止められ(第1段階),そこでろ過,変形,強調,反論付加などされてその周辺にいる集団メンバーに伝えられる(第2段階)ので,マスコミの影響力が直接に発揮されるというより,オピニオン・リーダーが対面集団face‐to‐face groupの中でもつ個人的影響personal influenceの方が大きい,とする理論である。これに対してクラッパーJ.T.Klapperは,多くの実験や社会調査の結果を総括して,人々の先有傾向predispositionを〈変化〉させる働きが強いのはパーソナル・コミュニケーションの方で,マスコミは先有傾向を〈強化〉する働きが強いという結論を引き出した。…
※「オピニオンリーダー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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