代表的な卵料理の一つ。新鮮な鶏卵を溶きほぐし、塩、こしょうで調味して、よく使い慣れたフライパンにバターを溶かし、強火で手早く焼いたものである。種類は非常に多いが、もっとも一般的で基本的なのはプレーンオムレツplain omeletである。
卵2~3個を器に割り入れ、泡立てないようによくほぐして、牛乳(大さじ1杯)、塩、こしょうで調味する。フライパンにバター大さじ1杯を溶かし、卵を一度に流し込み、強火で手早くかき混ぜて全体を半熟状にする。フライパンに触れた面の薄い皮を頼りに、手前から向こう側へ巻いて表面に焼き色をつけ、軽くフライパンの柄(え)をたたいて返しながら、なまこ形に仕上げる。皿に盛って熱いところを勧める。普通、1人分ずつ焼き上げるが、5人分くらいならまとめて大形に焼くこともできる。1人分なら肉皿に盛り、大形のものは小判形皿に盛って食卓で切り分けて供する。
オムレツを上手に焼くには、卵が新鮮であること、かき混ぜすぎないこと(かき混ぜすぎると卵白のこしを弱めてふっくら焼けない)、卵の量にあったフライパンを選ぶこと。フライパンは直径22センチメートルくらいの鉄製のものがよく、新しいもの、ステンレス製のものは使わないほうがよい。油はバターがいちばんよい。朝食用のプレーンオムレツは、中身を入れないで卵だけで焼くのでこの名前がついており、朝食用にはソースもかけない。昼食用とか家庭の夕食用には、ハム、チキン、チーズ、エビ、カニ、貝柱、野菜ではマッシュルーム、ホウレンソウ、トマト、アスパラガス、パセリ、ジャガイモなどを、焼いた卵で包むか、卵に混ぜて焼く。デザート用に、ジャム、果物の甘煮などを入れ、ブランデーやラム酒などをかけるオムレツケーキもある。また、パッフドオムレツpuffed omeletといって、卵黄に泡立てた卵白を混ぜて焼くオムレツは、病人食などによい。
オムライスはオムレツの一種であるが、中身にトマトケチャップの味つけご飯を入れ、薄焼き卵で大きく巻いてつくる。トマトケチャップをかけて食べる、まったく日本風のオムレツである。スペイン料理のトルティーヤも、ジャガイモ、タマネギ、トマト、ニンニクなどの野菜や、魚貝など多種多様な具を使って、丸い形に焼いたオムレツである。
[小林文子]
フランス語のオムレットomeletteからの転訛。代表的な卵料理。基本となるプレーンオムレツは,溶きほぐした卵を塩・コショウで調味し,バターを熱したフライパンに流し入れる。全体をかき混ぜながら強火で半熟程度になるまで火を通し,木の葉の形に整えて焼き上げる。新鮮な卵とよくなれた厚手のフライパンを用いることが決め手となる。肉類,魚貝類,野菜・キノコ類,チーズなどの材料を加えたオムレツを作る場合,プレーンオムレツに材料を包み込む方法と,小さく刻んだ材料を卵に混ぜ込んで焼く方法がある。特殊なオムレツとしては,卵白と卵黄を別々に泡立ててふっくらと焼き上げたオムレツスフレやジャムを包み込んで焼いたオムレツにラム酒やブランデーをかけて火をつけたまま供するものなど,甘味と風味をつけたデザート用のものがある。
執筆者:辻 静雄
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