(読み)らん

精選版 日本国語大辞典 「卵」の意味・読み・例文・類語

らん【卵】

〘名〙
配偶子の一つ。植物では卵細胞と呼び胚嚢、造卵器中にある大形の細胞動物では後生動物卵巣内にある卵子で、卵黄の含有量分布、卵黄の局在などにより種々の分類がなされている。精子を受精して卵割を開始し、一個生命体を形成する。卵珠
たまごのこと。
※造化妙々奇談(1879‐80)〈宮崎柳条〉四「巣を作り卵(ラン)(〈注〉タマゴ)を育し」

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デジタル大辞泉 「卵」の意味・読み・例文・類語

たま‐ご【卵】

鳥・虫・魚などの雌から産み出される、殻や膜に包まれた球形のもの。孵化ふかすると子になる。らん。「を産む」「がかえる」
(「玉子」とも書く)鶏の卵。鶏卵
まだ一人前にならない人。修業中の人。「学者
物事の起こりはじめ。未成熟なもの。「台風
[下接語]泡雪あわゆき磯巻いそまき卵り卵落とし卵寒卵きんの卵コロンブスの卵種卵なま半熟卵牡丹ぼたんで卵
[類語](2鶏卵白身卵白黄身卵黄

らん【卵】[漢字項目]

[音]ラン(呉)(漢) [訓]たまご
学習漢字]6年
ラン〉たまご。「卵黄卵管卵生卵巣卵白鶏卵産卵排卵孵卵ふらん抱卵累卵
〈たまご〉「卵色地卵じたまご生卵なまたまご

らん【卵】

生物がつくる配偶子精子と受精して新個体をつくる。動物では発生に必要な栄養分として卵黄を含み、丸く大きい。卵細胞。卵子。

かい〔かひ〕【卵/殻/×稃】

《「」と同語源》たまご。また、たまごのから。かいご。
「―のうちに命こめたるかりの子は君が宿にてかへさざるらむ」〈宇津保・藤原の君〉

かい‐ご〔かひ‐〕【卵】

《「かい」は殻の意》小鳥や鶏などの、殻のついたままのたまご。
「うぐひすの―の中にほととぎすひとり生まれて」〈・一七五五〉

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百科事典マイペディア 「卵」の意味・わかりやすい解説

卵【らん】

卵子,卵細胞とも。有性生殖をする生物の雌性配偶子。雄性配偶子に比べて大きく,運動性をもたず,細胞質内に大量の栄養を含む。動物では一般に精子ほど形態的に特殊化せず,普通,球形か楕円形。体細胞に比べて大型(特に鳥類)。栄養分として卵黄を含み,その量や分布状態から,卵黄量が比較的少なく,卵内に均等に分布している等黄卵(棘皮(きょくひ)動物,哺乳(ほにゅう)類),卵黄量が比較的多く,卵の一方に局在する端黄卵(軟体動物,魚類,両生類,爬虫(はちゅう)類),卵黄が卵の中心部に集中する心黄卵(中黄卵とも。昆虫)などに区別される。また卵は一般に極性を示し,動物極(卵形成の際,極体が出た部位,端黄卵では卵黄が少なく,原形質の多いほう)と植物極とがある。卵形成は卵巣中で行われる。まず卵原細胞が分裂を繰り返して増殖。次いでこれが卵黄を蓄積して成長し卵母細胞になり,さらに減数分裂を含む2度の分裂を経て染色体数を半減し卵となる。なお広義には卵とその卵膜をあわせたものをさし,また未受精卵から孵化(ふか)直前の胚をさすこともある。植物の場合,雌性配偶子嚢内で作られる。被子植物では胚嚢(はいのう)を作る8細胞のうち,最大の細胞を,裸子植物では造卵器中の大きな1細胞,シダ,コケ類では造卵器内の2細胞のうち下方にあるものを,それぞれ卵細胞という。また,藻類や菌類では,生卵器の中に作られる。
→関連項目体外受精卵割卵生

卵【たまご】

生物学上は(らん)すなわち卵細胞をいうが,ふつうはそのうち体外に産み出されたものをいう。細胞質中に栄養物質である卵黄を含み,そのまわりはさまざまな被嚢物でおおわれる。被嚢物は,鳥卵では卵白と石灰質の殻,昆虫卵では厚い卵胞膜,カエルやイモリではゼリー状物質など。ウミホオズキも海産巻貝の卵嚢である。卵の大きさはジンベエザメで68cm×40cm,ダチョウで16cm×12cm,エピオルニス(絶滅)で33cm×24cm,ハチドリの一種では1.2cm×0.8cmなど。哺乳(ほにゅう)類でもカモノハシ,ハリモグラなどの単孔類は卵を産む。産卵数は一般に親が卵を産みっぱなしにするものほど多く,親が世話するものほど少なくなる傾向がある。魚類は多く,イワシやニシンで10万粒,マンボウでは2億〜3億粒といわれる。
→関連項目性(生物)

卵【たまご】

玉子とも書く。ふつう鶏卵をいう。栄養価が高く,良質のタンパク質を含み,特に卵黄は脂肪,ビタミンA,B1,B2に富む。ニワトリの品種により白殻と赤殻がある。ゆで卵(ボイルドエッグ),目玉焼(フライドエッグ),卵焼き(伊達巻,厚焼きなど),オムレツ茶碗蒸し,いり卵(スクランブルドエッグ)などの料理に,またカステラ,プリンなどの菓子材料に使用されるなど用途が広い。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「卵」の意味・わかりやすい解説


たまご
ovum; egg

生物学の用語としては「らん」とも呼び,本来は雌の生殖細胞である卵細胞のことをいうが,一般には体外に産み出されたものをいい,特に動物の卵で,殻に囲まれた大型のものを「たまご」と呼ぶ。卵巣内の卵母細胞の減数分裂によって生じ,形は一般に球形,卵形など種々ある。発生に必要な卵黄をたくわえ,卵黄の量と分布によって,等黄卵,端黄卵,中黄卵などに分ける。また一般に極性があり,将来の分化とかかわりをもつ。卵は普通にこれを保護するための卵膜で包まれ,これには,卵自身の卵黄膜のほかに卵胞細胞から分泌された漿膜,輸卵管から分泌された卵白,卵殻膜,卵殻などがある。また植物では,被子植物の胚嚢内の珠孔に面した大きな細胞,裸子植物,コケ,シダ植物では造卵器内の大きな細胞が卵である。


らん

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世界大百科事典 第2版 「卵」の意味・わかりやすい解説

らん【卵 egg】

同一種の動植物において,生殖に関与する配偶子に形態学,生理学的な差が認められ,2種類以上のものが区別される場合に,それらを異型配偶子と呼ぶ。異型配偶子は形の大小にしたがって,それぞれ大配偶子,小配偶子と名づけられているが,大配偶子は一般に運動性をもたず,細胞質内には栄養物質を多量に有し,卵または卵子と呼ばれる。これに対して小配偶子は運動性に富み,細胞質はほとんどなく,細胞のほとんどすべてが細胞核成分と,運動のための小器官で占められていて,精子と呼ばれる。

たまご【卵 egg】

動物の雌が体外に産み出す卵子のこと。卵細胞は動物の諸細胞の中で最大で,とくに鳥類の卵は大きく,最小のハチドリの1種の卵でも1.2cm×0.8cm,最大のダチョウ卵に至っては16cm×12cmもの大きさがある。鳥類では,体の大きな鳥ほど大きな卵を産む傾向がある。ただし,体重に対する卵重の比は,大きな鳥ほど小さくなる傾向がある。体外に産み出される卵は,外敵からの保護や乾燥の防止などのために,膜membraneや殻shellによっておおわれていることが多い。

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栄養・生化学辞典 「卵」の解説

 卵子ともいう.雌の配偶子.

 通常鶏卵.

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世界大百科事典内のの言及

【配偶子】より

…紅藻と他の藻類の一部および多くの菌類の配偶子は雌雄とも鞭毛を欠くので,不動配偶子aplanogameteと呼ばれる。また陸上植物,藻類の一部および動物では,大型の雌性配偶子は鞭毛をもたないので,小型の雄性配偶子は精子と呼ばれる。19世紀末にそれぞれ平瀬作五郎,池野成一郎によって精子が発見されたイチョウとソテツ類以外の裸子植物および被子植物の雄性配偶子は,鞭毛のない精細胞である。…

【養鶏】より

…鶏卵や鶏肉などニワトリの生産物を利用するためニワトリを飼養することをいう。飼い方により平飼い養鶏,ケージ養鶏,バタリー養鶏あるいは庭先養鶏などと区分することもあるが,生産目的によって分類すれば採卵養鶏とブロイラー養鶏とに大別され,それぞれはさらに種鶏生産と実用鶏飼育に区分される。…

【両性具有】より

… しかし,アンドロギュノスとしての原初的存在は,さらに古く世界各民族の宇宙創成神話に痕跡をとどめている。宇宙開闢(かいびやく)時には,世界は性的に未分化の〈卵〉であり,その潜勢的な産出力により神々と万物が分かれ出た。かくて始原にあるのは両性具有者なのである。…

【育児】より


〔育児の医学〕

【ヒトの成長・発達と育児】
 人は,受胎後,胎内で約280日を過ごす。この間に,受精卵は細胞分裂を繰り返し,細胞分裂がある程度進むとそれに細胞の機能分化が加わって,身体を構成する諸器官が形成され,出生に備えてその機能も発達を続ける。視・聴・嗅(きゆろ)・味・触・圧覚などの感覚,哺乳,排出の能力は,胎内生活の末期にはほとんどその機能が完成する。…

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