ミカン科(APG分類:ミカン科)の常緑小高木。別名スイートオレンジ、アマダイダイ(甘代々)、キンクネンボ。原産地はアッサムで、中国およびインド、中近東を経て地中海、東アフリカに伝播(でんぱ)し、さらに世界に広まった。日本へは1888~1891年(明治21~24)ころ渡来した。冬季が温暖で乾燥する地帯に適し、熱帯から温帯南部に多い。花は5月ごろ開き、やや小形で白色、芳香に富む。果実は円形ないし楕円(だえん)形で、150~250グラム。果皮はむきにくい。香気が強く、甘味に富む。ビタミン類も多く、果肉100グラム中にビタミンC6ミリグラムのほかビタミンB類にも富む。
[飯塚宗夫 2020年10月16日]
枝がわりや実生(みしょう)変異が多く、100余品種が知られる。ヒュームH. H. Humeはアメリカにある品種群を次のように4大別した。
(1)スペイン系 スペイン人により導入され、フロリダに多い。大果で肉質はやや粗く、多雨にも耐える。インディアンリバー、パーソンブラウンなどの品種がある。
(2)地中海系 地中海沿岸から南ヨーロッパでおきた品種群で品質はよい。夏季乾燥する地方に適する。バレンシア、パイナップル、ジョッパ、ジャッファなどの品種がある。福原オレンジはユズ台に接いだジョッパの枝がわりといわれる。
(3)血ミカン系 南ヨーロッパ原産で、熟果の果皮や果肉は濃紅色。品質はよいが、血色が嫌われ減少しつつある。マルチーズブラッド、ルビーブラッドなどの品種がある。
(4)ネーブル系 多くの品種の果実は心皮の形成が二重ないし三重となってできたネーブルnavel(へその意味)をもつ。ネーブルオレンジはブラジル起源でセレクタオレンジの枝がわりといわれる。日本には1889年に導入された。比較的矮性(わいせい)で、雌性器官は受精能力があるが、花粉不稔(ふねん)のため種子なし果を結ぶ。しかし、よい花粉のできる品種と混植すると種子ができる。12月下旬から収穫され、品質はよい。本種には多くの枝がわりがある。結果率のよい鵜久森(うくもり)(1938年発表)、早熟の吉田や大三島、早熟で貯蔵性のある丹下(たんげ)、糖度が高く3、4月まで貯蔵のきく森田、甘くて豊産の清家(せいけ)その他がある。実生から得られたトロビタオレンジ(1916年発表)は果形は丸く150グラム程度で、へそはない。品質はよく豊産である。バレンシアオレンジはポルトガル領アゾレス諸島で発見された品種で、アメリカに導入(1870年)以来、広く栽培され、日本にも1903年(明治36)に入ったが耐寒性が弱い。本品種は世界一の生産量を示す。ほかにワシントンネーブルもよく知られている。
[飯塚宗夫 2020年10月16日]
オレンジの世界の総生産量(2016)は7319万トンで、ブラジル、中国、インド、アメリカ、メキシコ、エジプト、スペインなどが多い。日本では420.3ヘクタール、6431トン(2015、ネーブルオレンジ)を産し、年々減少している。
[飯塚宗夫 2020年10月16日]
生食のほかジュース、マーマレード、果皮の砂糖漬け、砂糖煮など利用面は広い。オレンジジュースは搾り汁を88~90℃に数秒つけ、製品中のフレーバーを分解する酵素を分解し、この液10キログラムに対し1.45キログラム前後のショ糖を加えて真空脱気してつくる。濃縮ジュースは、これをさらに43℃以下で真空濃縮して、糖度65度前後に加工したものである。多くはビタミンCを添加してある。オレンジマーマレードは生果10キログラムに対し、ショ糖1.1キログラム、粉末ペクチン25グラム、酸を少々加え、糖度を70度程度に煮つめてつくる。
[飯塚宗夫 2020年10月16日]
オレンジの名は、サンスクリット語のナガルンガNagarunga、ヒンディー語のナルンジーNarungeeからアラビア語のナルンジNarunjiを経て英名となった。ナガルンガは、サンスクリット語の文献では酸っぱいサワーオレンジ(ダイダイ)を意味し、疲労回復や消化促進の薬に使われた。甘いスイートオレンジは、いつ、どこで誕生したのかはっきりしていないが、紀元後の早い時期に、中国あるいはベトナムからインドへ伝わり、14世紀までにはイタリアに達していた。本格的にヨーロッパに広がるのは、1498年インドに到着したバスコ・ダ・ガマの航海以降で、東洋から直接導入されてからである。なお、西洋の結婚式にオレンジの花が使用されるのは、白い花を純潔の象徴とし、またオレンジの実の多産性と木の常緑性から子供に恵まれ、繁栄するようにと願う慣習からである。
[湯浅浩史 2020年10月16日]
かんきつ類のうち,ミカン属(カンキツ属ともいう)Citrusに含まれるものの一群で,大きく次の三つに分けられる。(1)スイートオレンジC.sinensis Osbeck(英名sweet orange) アマダイダイ(甘橙)といわれる種類。普通にオレンジというとこのスイートオレンジをさす。さらにバレンシアオレンジなどの普通系オレンジcommon orange,ネーブルオレンジnavel orange,血ミカンblood orange(またはpigmented orange),無酸オレンジsugar orange(またはacidless orange)の4種に分類できる。(2)サワーオレンジC.aurantium L.(英名sour orange) ビターオレンジbitter orangeともいわれる。日本のダイダイ(橙)もこの中に含まれる。葉が極端に小さいマートルリーフオレンジmyrtle-leaf orange,果実の形・色がライムに似たベルガモットオレンジbergamot orange,萼が肥厚したザ(座)ダイダイなどが含まれる。(3)マンダリンオレンジC.reticulata Blanco(英名mandarin orange) 通常,果皮が黄橙色のマンダリンと紅橙色のタンゼリンtangerine orangeに大別される。
3種ともインドのアッサムを中心とするアジア南東部が原産地。中国へは比較的早く伝播(でんぱ)し,マンダリンは4000年以上,サワーオレンジ,スイートオレンジは2000年以上の歴史があるといわれる。陸路揚子江(長江)を東に下って伝播し,品種群がつくられた。西欧には12世紀ごろアラブの通商ルートによりサワーオレンジが伝わり,15世紀初期に同じく陸路イタリアの通商ルートでスイートオレンジが伝播した。別に,喜望峰を回る航路の発見(1498)後,ポルトガル人により中国から優良な品種が導入された。マンダリンオレンジは1805年中国からイギリスに導入された。アメリカ大陸に伝播したのはコロンブスの新大陸発見以後である。オーストラリアにはさらに遅い。日本への導入はサワーオレンジ,マンダリンオレンジが古い。記紀に記されているトキジクノカクノコノミ(非時香菓)はダイダイだろうといわれている。マンダリンの1種コウジ(甘子,たぶん紅(大)柑子)が,奈良時代に唐より導入された。この類の1種であるタチバナは日本の原産種。スイートオレンジの導入は以前にも南方から鹿児島への導入が知られているが,おもに明治以降である。
3種類のおもな差異をみると,枝条はマンダリンが他2種に比べ一般に細い。葉もマンダリンは小さいものが多い。翼葉はサワーオレンジは比較的大だが,他2種は小さい。とくにマンダリンは小さい。とげの発生はマンダリンはほとんどないが,他の2種は少し生ずる品種がある。スイートオレンジで目だつ。果実の剝皮性はマンダリンは容易だが,他2種は難。スイートオレンジは最も難。果形はマンダリンは扁平のものが多い。サワーオレンジ,スイートオレンジは球形だが,スイートオレンジの方が一般に長球形。サワーオレンジ,スイートオレンジは総状花序を形成するが,マンダリンは一般に単生花。花の大きさは中程度で,花弁の長さは20mm前後。しかしマンダリンは他2種に比べ花がかなり小さいものが多い。花弁は五つで白色だが,マンダリンは他2種に比べ白みが強く光沢のあるものが多い。開花期は5月上・中旬だが,マンダリンは一般に他2種に比べ遅く,中・下旬のものが多い。
スイートオレンジ,マンダリンオレンジ類はおもに生食用にされる。しかし,かなりの量が加工用としてジュース,シロップ漬などにされる。大産地ブラジルのオレンジは加工用としてジュースにされる方が多い。ネーブルオレンジはジュース原料としては,苦みを生ずるため不向きである。サワーオレンジはマーマレード,食酢,正月のお飾用として利用される。
→かんきつ類
執筆者:山田 彬雄
オーストラリア,ニュー・サウス・ウェールズ州,シドニーの西北西265km(道路距離)にある都市。人口3万(1991)。果樹,混合農業,肉用羊地帯の中心地で,とくにサクランボで知られる。電気機器工業をはじめ軽工業が発達し,日系企業の毛織物工場もある。近くの金鉱(オファー)のゴールド・ラッシュ(1851)をきっかけに発展。1946年市制。市名はイギリス皇族(後のオランダ王家)名に由来する。
執筆者:谷内 達
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…世界のかんきつ類生産量の約70%を占める。酸が多いサワーオレンジなどと区別するためスイートオレンジというが,単にオレンジと呼ばれることが多い。突然変異で多くの品種が系統分化し,それらは次の4品種群に大別できる。…
※「オレンジ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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