改訂新版 世界大百科事典 「オーコンネル」の意味・わかりやすい解説
オーコンネル
Daniel O'Connell
生没年:1775-1847
アイルランドの政治家。カトリック解放法(1829)を成立させ,アイルランドのイギリスとの合併の撤回を目的とする大衆運動を指導し,〈解放者〉として尊敬されている。富裕な叔父のもとで育ち,フランスのカトリック学校に学ぶ。この時期にフランス革命を実地に見て,政治目的実現のための暴力行使に批判的となる。ロンドンで弁護士資格取得のための勉強のかたわらルソー,アダム・スミスなどを読み,カトリック解放と経済的自由主義を信条とするにいたった。帰国後法律家として愛国者の弁護を行い,名声と富を得た。アイルランドとイギリスの合併(1800)に際しての,カトリック解放の約束を契機に政治活動に入り,1823年カトリック協会を創立,合法的手段による解放をめざした。28年クレア県の補欠選挙に当選,彼の大勝はイギリスのR.ピールやウェリントン公らにアイルランドの反乱回避のためのカトリック解放を決意させたといわれる。解放法成立後の30年,イギリス近代史上最初のカトリック議員となり,西インドの奴隷制や東インド会社の独占に反対し,成年男子普通選挙権や自由貿易を主張した。40年撤回協会を創立,イギリス国王の下でアイルランド議会が独立に機能できるように,合併の撤回を要求する大衆運動を起こした。43年,流血を回避するため大規模な集会を中止し,以後運動の指導権は急進的な青年アイルランド党に移り,引退を余儀なくされた。
執筆者:上野 格
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報