オーストロアジア語族(読み)オーストロアジアごぞく(英語表記)Austroasiatic languages

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

オーストロアジア語族
オーストロアジアごぞく
Austroasiatic languages

W.シュミットオーストロネシア語族とともにオーストリック語族を形成するとした語族。南亜語族ともいい,次の3群から成る。 (1) モン=クメール語族。 (a) モン語,クメール語 (カンボジア語) ,バナル語など,(b) チャム語,ジャライ語,ラデー語,セダン語,(c) セマン語サカイ語など,(d) ニコバル語,(e) パラウン語,リアン語などタンルウィン盆地の諸言語,(f) カシ語。 (2) ムンダ語族。 (3) アンナン=ムオン諸語。しかし言語学的証明は確立されておらず,また,H.マスペロは (3) をタイ語族に含めている。オーストロアジア語族はシナ=チベット語族と異なり,各語調の声調の区別がないのが特色。語詞は一般に単綴的。文型は「主・動・客」の形で,形容詞格助詞はあとにつく。

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大辞林 第三版の解説

オーストロアジアごぞく【オーストロアジア語族】

モン-クメール語族・ムンダ諸語・ニコバル諸語など、中国の雲南、インドシナ半島からマレーシア・インド北東部にかけて分布する諸言語を含む語族。南アジア語族。アウストロアジア語族。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

オーストロアジア語族
おーすとろあじあごぞく

南アジア語族の意で、インドシナ半島からマレー半島、インド中部にかけて点在し、同系統とみなされる諸言語。その分布に基づいて次のように下位分類される。
(1)モン・クメール語群 ビルマ(ミャンマー)南部のモン語、クメール語(カンボジア語)、カトゥ諸語(カンボジアからタイにかけてのクイ語、ベトナムからラオスにかけてのカトゥ語など)、バフナル諸語(ベトナムのマア語、カンボジアからベトナム南部にかけてのムノン語、スティエン語など)、カンボジアからタイにかけてのペル諸語がここに属するが、この(1)の言語間の親族性の密度がもっとも高い。したがってオーストロアジア語族をさして、広義にモン・クメール諸言語ということもある。
(2)マラッカ語群 別名アスリアン。マレー半島山中のセマン語、サカイ語、ジャクン語。しかしこの(2)の位置づけについては異論があり、またジャクン語のみを除く説もある。
(3)ムンダ語群 インド東部のサンターリー語、ムンダーリー語、中部のカーリア語、クールクー語など。
(4)ニコバル諸語 インド洋上のニコバル諸島の言語。従来、ビルマのサルウィン川流域からシャン諸州、タイ山地にかけてのパラウン語、ワ語、リアン語はニコバル諸語およびインドのアッサム地方のカシ語とまとめて一群とされていたが、最近は、パラウン・ワ諸語、カシ語をそれぞれ独立させて(1)に加える。そのほか、ラオスからタイにかけてのクム諸語(ユムブリ語=ピートンルアン語、クム語など)が新たに(1)に帰属せしめられた。
 このようにオーストロアジア語族は、その統一的概念とともにその分類にもまだかなりの流動性がある。ことに問題となる言語として、ベトナム語は、ベトナム北部のムオン語とともに、その語彙(ごい)的類似から(1)に含められたり、また声調をもつ点でシナ・チベット語系のタイ語群に関係づけられたりする一方、ベト・ムオン諸語としてほかからは孤立的に扱われることもある。ベトナム、カンボジアに散らばるチャム諸語(チャム語、ジャライ語、ラデ語など)は、一般にオーストロネシア語族のインドネシア語派に含められるが、オーストロアジア語族の言語を基層として、そのうえにインドネシア語派系の言語の影響を受けてできた重層的言語とする異説がある。モン・クメール語群において、語形は通常 CVC(Cは子音、Vは母音)のように単音節で、このまま語として、また接頭辞や接中辞とともに派生語をつくる(クメール語kat「切る」→k-amn-at「片」、s-kat「切り離す」、ban-kat「分ける」)。語順は主語+動詞+目的語となる。ただしムンダ語群では、接尾辞が一般に用いられ、語形も2音節が多く、語順も主語+目的語+動詞となるため、この語族から除かれることがある。オーストロアジア語族とオーストロネシア語族とをあわせてオーストリック語族とするシュミットP. W. Schmidt以降の仮説は、いまだ十分に証明されていない。[崎山 理]

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