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少年時の声を大人になっても保つために去勢した男性歌手。喉頭(こうとう)は少年時代のままであるが、肺は成人の肺になるため、強く張った響き、特有の声質、非常に広い声域をもつ。カストラートに関する記録は、1562年のローマ教皇庁礼拝堂にまでさかのぼるが、全盛期は1650年ごろから1世紀で、ファリネッリFarinelli(1705―82)がもっとも有名である。カストラートはオペラ・セリアにしばしば登場したが、喜劇的オペラにはまれにしか用いられなかった。モーツァルトのオペラ『イドメネオ』『ティトゥス帝の慈悲』にはカストラートのための役がある。ローマ教皇は1903年にカストラートを禁止した。最後のカストラートはモレスキAlessandro Moreschi(1858―1922)で、彼の声はレコードに記録されている。
[美山良夫]
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[作品と歌手]
しかし,オペラとオーケストラの結びつきがいかに深いとしても,オペラという芸術の〈花〉が,しょせん名歌手の名演にあることは,いうまでもない。すぐれた劇的表現のために,17~18世紀にはカストラートと呼ばれる人工的な声(男性アルト)が用いられ,一世を風靡したファリネリG.Farinelli(1769‐1836)のような名歌手が生まれたが,カストラートを主役に配した有名なオペラは,モーツァルトの《イドメネオ》(1781)が最後である。初期のオペラにおける主要な役は,このカストラートのほか,ソプラノとテノールに限られていたが,18世紀に発展したオペラ・ブッファは道化役のバスを重視し,アリアの形式も重唱の組合せも,いっそう豊富になった。…
…ソプラノの語が最上声部の意で定着するのは16世紀後半で,イタリア各地の宮廷の世俗音楽活動が隆盛に向かい,女声の特性と高い音域を意識したマドリガーレや祝祭音楽などが書かれるようになり,17,18世紀のオペラやカンタータの主役を演ずる華やかな独唱ソプラノの開拓につながっていく。バロックのオペラ・セリアにあっては女声よりも力強さと音量が勝る等の理由から,カストラートが君臨していたが,オペラ・ブッファの発展とともに女声が一般的となる。そして役柄,声質,唱法に応じてコロラトゥーラcoloratura(主役級が華麗な高音域の旋律を技巧をこらして歌うもの),リリコlirico(抒情的な声で可憐な娘役),ドラマティコdramatico(力強く劇的な性格表現),スブレットsoubrette(艶のある声で気転の利く侍女役)などに分類されるようになる。…
※「カストラート」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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