カストラート(英語表記)〈イタリア〉castrato

百科事典マイペディアの解説

カストラート

イタリア語で男性の去勢歌手。喉頭(こうとう)は子供のまま成人の肺活量胸郭をもつため,広い音域と力強い響きの声が特徴。教皇庁の聖歌隊では20世紀初頭まで活躍したが,特に17−18世紀のイタリアのオペラではセネシーノ(本名F.ベルナルディ)〔1680ころ-1750ころ〕,G.ファリネッリ〔1769-1836〕などの花形歌手が出て人気を集めた。
→関連項目ソプラノ

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世界大百科事典 第2版の解説

カストラート【castrato[イタリア]】

男性去勢歌手。少年の音色,声域を保持したまま成人の肺活量,胸郭によって息の長いフレーズ,広い音域,力強い響きを得ることができる。去勢歌手は1562年バチカン礼拝堂に現れ,特に教皇領では女性が舞台に立つことが禁じられていたため,17~18世紀イタリア・オペラで大流行し,社会的・経済的にもスター的存在であった。カトリック教会は1587年去勢手術を禁じたが守られず,バチカン礼拝堂合唱団には1913年まで存在していた。

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大辞林 第三版の解説

カストラート【castrato】

少年の声を保持するために変声期以前に去勢した男性歌手。一六~一八世紀のイタリアで盛行。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

カストラート
かすとらーと
castratoイタリア語

少年時の声を大人になっても保つために去勢した男性歌手。喉頭(こうとう)は少年時代のままであるが、肺は成人の肺になるため、強く張った響き、特有の声質、非常に広い声域をもつ。カストラートに関する記録は、1562年のローマ教皇庁礼拝堂にまでさかのぼるが、全盛期は1650年ごろから1世紀で、ファリネッリFarinelli(1705―82)がもっとも有名である。カストラートはオペラ・セリアにしばしば登場したが、喜劇的オペラにはまれにしか用いられなかった。モーツァルトのオペラ『イドメネオ』『ティトゥス帝の慈悲』にはカストラートのための役がある。ローマ教皇は1903年にカストラートを禁止した。最後のカストラートはモレスキAlessandro Moreschi(1858―1922)で、彼の声はレコードに記録されている。[美山良夫]

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精選版 日本国語大辞典の解説

カストラート

〘名〙 (castrato) 変声期以前に去勢された男性歌手。ソプラノまたはアルトの音域で、美しく澄んだ響きの独特の音色をもつ。一六世紀から一八世紀にイタリアでもてはやされた。

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世界大百科事典内のカストラートの言及

【オペラ】より


[作品と歌手]
 しかし,オペラとオーケストラの結びつきがいかに深いとしても,オペラという芸術の〈花〉が,しょせん名歌手の名演にあることは,いうまでもない。すぐれた劇的表現のために,17~18世紀にはカストラートと呼ばれる人工的な声(男性アルト)が用いられ,一世を風靡したファリネリG.Farinelli(1769‐1836)のような名歌手が生まれたが,カストラートを主役に配した有名なオペラは,モーツァルトの《イドメネオ》(1781)が最後である。初期のオペラにおける主要な役は,このカストラートのほか,ソプラノとテノールに限られていたが,18世紀に発展したオペラ・ブッファは道化役のバスを重視し,アリアの形式も重唱の組合せも,いっそう豊富になった。…

【ソプラノ】より

…ソプラノの語が最上声部の意で定着するのは16世紀後半で,イタリア各地の宮廷の世俗音楽活動が隆盛に向かい,女声の特性と高い音域を意識したマドリガーレや祝祭音楽などが書かれるようになり,17,18世紀のオペラやカンタータの主役を演ずる華やかな独唱ソプラノの開拓につながっていく。バロックのオペラ・セリアにあっては女声よりも力強さと音量が勝る等の理由から,カストラートが君臨していたが,オペラ・ブッファの発展とともに女声が一般的となる。そして役柄,声質,唱法に応じてコロラトゥーラcoloratura(主役級が華麗な高音域の旋律を技巧をこらして歌うもの),リリコlirico(抒情的な声で可憐な娘役),ドラマティコdramatico(力強く劇的な性格表現),スブレットsoubrette(艶のある声で気転の利く侍女役)などに分類されるようになる。…

※「カストラート」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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