スペイン北東部に位置。1977年に自治権回復に関する暫定協定が結ばれ、自治政府が40年ぶりに復活した。商工業が盛んで裕福な地域として知られる。州都はバルセロナ。人口はスペイン全体の約16%に当たる約750万人。住民の多くがスペイン語とカタルーニャ語を話し、地中海交易が発達した中世以来、独特の文化を持つ。スペインには17の自治州があるが、民族意識の強い北部バスク自治州などとともに、財政面などで他自治州よりも高度な自治権が認められている。(共同)
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スペイン北東部の歴史的地方名。英語名カタロニアCatalonia。ピレネー山脈東部の南斜面、地中海沿いの海岸山脈、およびその背後の低地からなる。ヘロナ、バルセロナ、レリダ、タラゴナの4県を含み、面積3万1930平方キロメートル、人口634万3110(2001)。海岸部は地中海性の温和な気候であるが、海岸山脈の北側は内陸性の厳しい気候である。しかし灌漑(かんがい)施設が発達し、肥沃(ひよく)な土壌にも恵まれて農業が盛んであり、穀物、豆類、オリーブ、ブドウ、野菜などが栽培される。ヘロナ地方ではコルクガシを特産する。エブロ川河口の三角州地域では水田がみられる。また牧畜も盛んで、ヒツジ、ブタ、ニワトリなどが飼育され、ピレネー山麓(さんろく)では乳牛が飼育される。中・小規模の農家が多いが、スペインでもっとも機械化の進んだ農業地域である。バルセロナおよびエブロ河谷を中心とする海岸部は重要な工業地帯を形成し、金属、電気、機械などの重工業、薬品、染料などの化学工業、および食品工業など、各種工業が立地する。とくに、18世紀の中ごろにエブロ川本支流の豊富な水力を利用しておこった繊維工業は、1970年代で全国生産の70%以上を占めていた。中心都市はバルセロナで、港湾規模、商工業活動ではスペイン第一の産業都市である。
歴史的に南フランスとの結び付きが強く、地形的にも、スペイン主要部をなすカスティーリャ地方よりも北西部のアラゴンや北部のピレネーとの連続性が顕著である。そのためこの地方はスペインのなかでも独自の集団意識と文化的特質をもつ。この地方の人々はカタルーニャ人とよばれ、カタルーニャ王国時代に培われた固有の文化と彼らの言語であるカタルーニャ語を誇りとしている。カタルーニャは市民自治の伝統をもった先進地域であったが、1978年の新憲法で自治州の成立が認められ、その議会選挙が1980年に行われた。
[田辺 裕・滝沢由美子]
カタルーニャは、古くからギリシア人、フェニキア人が植民市をつくり、古代ローマ時代には、ヒスパニア・タラコネンシスとよばれる属州の一部であった。5世紀から西ゴート人が、8世紀からはモロ人(ムーア人)が侵入し、この地を支配した。8世紀末にはフランク王国のカール大帝が侵入し、9世紀初めにスペイン辺境領とした。これはのちにバルセロナ伯領として独立した。レコンキスタ(国土回復戦争)の進展する過程で、12世紀から15世紀初めまでアラゴン王国と同君連合であった。この間、カタルーニャは地中海貿易を独占して繁栄した。15世紀末のアラゴンとカスティーリャ両王国の合併と大西洋航路の発見によって、スペインにおけるカタルーニャの地位は低下したが、カスティーリャに反抗して政治的、言語的な自治を要求し続けた。17世紀中葉には大規模な反カスティーリャ反乱があり、18世紀のスペイン継承戦争では、オーストリアに味方してブルボン家に反対、反乱を起こしたが、失敗し、政治的、法的特権を奪われた。19世紀後半、資本主義の発達とともにカタルーニャはスペインの労働運動の中心地となり、マドリードからの分離・自治権獲得運動も活発となった。アナキズム、サンジカリズムが有力なことが、この地の労働運動の特色であった。スペイン第二共和国の成立によって、1932年自治権を得、1936~39年のスペイン内戦においては人民戦線派の拠点となり、内戦の最後までフランコ軍に抵抗した。フランコ支配の下で自治は剥奪(はくだつ)され、カタルーニャ語の使用も禁じられたが、フランコの死後の1977年にふたたび自治を回復した。2006年6月にはカタルーニャ州の住民投票によってカタルーニャ語優先などが決まった。
[斉藤 孝]
『樺山紘一著『カタロニアへの眼――歴史・文化・社会』(1979・刀水書房)』
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