日本大百科全書(ニッポニカ) 「カドミウムレッド」の意味・わかりやすい解説
カドミウムレッド
かどみうむれっど
cadmium red
硫セレン化カドミウムCd(SSe)系固溶体からできている赤色顔料で、セレン赤ともいう。Se2-の置換量が増すにつれ、色調は橙(だいだい)から赤に寄る。オレンジはCd(S0.82Se0.18)、ライトはCd(S0.69Se0.31)、ミドルはCd(S0.58Se0.42)、マルーンはCd(S0.5Se0.5)の組成である。製法はカドミウムエローの場合と同様、湿式法が主として用いられている。すなわち、カドミウム塩水溶液に硫化ナトリウムとセレンを含む水溶液を加え、生成した沈殿を洗浄後、カドミウムエローと同様に、非酸化性の雰囲気で焼成する。分光反射率曲線はカドミウムエローの場合より紫外部からの吸収がさらに深く可視部に食い込み、かつ、その食い込み方はSe2-の置換量が増すほど深くなっている。オレンジは文字どおり鮮明な橙色を示すが、ライト、ミドルでは赤となり、この色調はとくに美しい。また、マルーンでは約650ミリミクロンより長波長側の反射も低くなり、可視部約620ミリミクロン付近まで紫外部から食い込んだ吸収のため、紫味赤、いわゆる栗(くり)色を示す。Se2-が多くなると耐候性はさらに向上する。プラスチック、ゴム、絵の具などに用いられるほか、一部は陶磁器の上絵の具に用いられる。
[大塚 淳]