カブトエビ(その他表記)tadpole shrimp

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カブトエビ」の意味・わかりやすい解説

カブトエビ
tadpole shrimp

鰓脚綱背甲目カブトエビ科 Triopsidaeの総称。カブトエビ属 Triops はアメリカカブトエビ T. longicaudatus,アジアカブトエビ T. granarius,ヨーロッパカブトエビ T. cancriformis,オーストラリアカブトエビ T. australiensis が知られており,前 3種は日本からも記録されている。そのほか,冷水性のヘラオカブトエビ Lepidurus arcticus(1属 1種)が知られている。日本各地で普通に見られるアメリカカブトエビは 6~7月頃水田の底をはい回る。一見おたまじゃくし様で,体の前半は長さ 2cmほどの楕円形の甲で覆われ,前方左右に一対の大きな複眼をもつ。腹部は約 1cmで多数の節に分かれ,鰓と運動の役目を果たす 40対以上の脚をもつ。腹部の末端には 2cmほどの一対の尾鞭がある。およそ 2億5100万年前の中生代三畳紀以来ほとんど変わらない「生きている化石」である。孵化後 2週間ぐらいで産卵を始め,1ヵ月ほどで死滅する。卵は乾燥に耐える耐久卵で,一度乾燥しないと孵化しない。(→甲殻類鰓脚類節足動物

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改訂新版 世界大百科事典 「カブトエビ」の意味・わかりやすい解説

カブトエビ
Triopus longicaudatus

クサトリムシとも呼ばれる。背甲目カブトエビ科の小型甲殻類。外観は小型のカブトガニを思わせる形態をしているが,細い胴の尾部末端に多くの節からなる長い尾叉(びさ)がある。体は汚緑褐色あるいは暗緑色,長さ2~3cmくらい。日本中部以西の水田などに初夏ころ突然おびただしく出現し,1ヵ月くらいで消滅する。背甲は非常に幅広くかぶと状,その前方背面に1対の複眼がある。頭部と有肢の胴部体節はその下面に隠れている。突然発生するのは,耐久卵が幾年も土壌中に乾燥した状態で生き続け,これが一度水中に浸って,その環境がよければいっせいに孵化(ふか)し,単為生殖によって繁殖し,おびただしい数の個体を生ずることによる。遊泳もするが,泥底をはい,肢で泥をかき上げて,そこにいる生物を捕食する。日本のカブトエビは,外国からいつのまにか入ってきたもので,アジア大陸系,アメリカ系およびヨーロッパ系のものが混じっているといわれる。ほかに近似種のヘラオカブトエビLepidurus arcticus千島グリーンランドなどの寒帯に見られる。カブトエビ科には15種ほどが知られている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「カブトエビ」の意味・わかりやすい解説

カブトエビ
かぶとえび / 兜蝦
tadpole shrimp

節足動物門甲殻綱背甲目カブトエビ科Triopsidaeの水生動物の総称。全世界で4種が知られ、そのうち日本には3種が生息している。アジアカブトエビTriops granariusとアメリカカブトエビT. longicaudatusが関東地方から南に、ヨーロッパカブトエビT. cancriformisが山形県に分布する。あとの種は、オーストラリアに分布するオーストラリアカブトエビT. australiensisである。

 淡水産で、水田や水たまりに出現し、いずれもよく似ている。体の前半部は長さ2センチメートルほどの楕円(だえん)形の背甲で覆われ、腹節には40対以上の脚(あし)をもち、末端には約2センチメートルの1対の尾鞭(びべん)がある。体色は汚緑褐色ないし暗緑色で、尾鞭は褐色を帯びる。泥土上をすばやく歩いたり泳いだりし、乾燥や低温に強い耐久卵を産んだあと1か月ぐらいで死ぬ。産地によって、有性生殖をする個体群と単為生殖をする個体群がある。雑食性で、泥とともに微小生物を食べ、また雑草の根も食べるので「草取り虫」の名もあり、生物農薬として利用する試みもある。

[武田正倫]


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百科事典マイペディア 「カブトエビ」の意味・わかりやすい解説

カブトエビ

鰓脚(さいきゃく)類カブトエビ科の甲殻類。中部地方以西の水田に初夏のころ群生して現れるが,多くは1ヵ月ほどで死ぬ。1枚の兜(かぶと)形の甲をもち小型のカブトガニを思わせるが,体は円筒形で多節。1対の長い尾鞭がある。脚は40対以上,第1脚の第4内肢は特に長い。汚緑褐色〜暗緑色。体長20〜30mmくらい。雑食性で雑草の根も食べるので〈草取り虫〉の名もある。

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