ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カブトエビ」の意味・わかりやすい解説
カブトエビ
tadpole shrimp
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クサトリムシとも呼ばれる。背甲目カブトエビ科の小型甲殻類。外観は小型のカブトガニを思わせる形態をしているが,細い胴の尾部末端に多くの節からなる長い尾叉(びさ)がある。体は汚緑褐色あるいは暗緑色,長さ2~3cmくらい。日本中部以西の水田などに初夏のころ突然おびただしく出現し,1ヵ月くらいで消滅する。背甲は非常に幅広くかぶと状,その前方背面に1対の複眼がある。頭部と有肢の胴部体節はその下面に隠れている。突然発生するのは,耐久卵が幾年も土壌中に乾燥した状態で生き続け,これが一度水中に浸って,その環境がよければいっせいに孵化(ふか)し,単為生殖によって繁殖し,おびただしい数の個体を生ずることによる。遊泳もするが,泥底をはい,肢で泥をかき上げて,そこにいる生物を捕食する。日本のカブトエビは,外国からいつのまにか入ってきたもので,アジア大陸系,アメリカ系およびヨーロッパ系のものが混じっているといわれる。ほかに近似種のヘラオカブトエビLepidurus arcticusが千島,グリーンランドなどの寒帯に見られる。カブトエビ科には15種ほどが知られている。
執筆者:蒲生 重男
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節足動物門甲殻綱背甲目カブトエビ科Triopsidaeの水生動物の総称。全世界で4種が知られ、そのうち日本には3種が生息している。アジアカブトエビTriops granariusとアメリカカブトエビT. longicaudatusが関東地方から南に、ヨーロッパカブトエビT. cancriformisが山形県に分布する。あとの種は、オーストラリアに分布するオーストラリアカブトエビT. australiensisである。
淡水産で、水田や水たまりに出現し、いずれもよく似ている。体の前半部は長さ2センチメートルほどの楕円(だえん)形の背甲で覆われ、腹節には40対以上の脚(あし)をもち、末端には約2センチメートルの1対の尾鞭(びべん)がある。体色は汚緑褐色ないし暗緑色で、尾鞭は褐色を帯びる。泥土上をすばやく歩いたり泳いだりし、乾燥や低温に強い耐久卵を産んだあと1か月ぐらいで死ぬ。産地によって、有性生殖をする個体群と単為生殖をする個体群がある。雑食性で、泥とともに微小生物を食べ、また雑草の根も食べるので「草取り虫」の名もあり、生物農薬として利用する試みもある。
[武田正倫]
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