カプサイシン(英語表記)capsaicine

  • capsaicin

食の医学館の解説

トウガラシといえば辛いものというのが一般的な認識ですが、すべてが辛いわけではありません。辛みがなく野菜として利用される、シシトウや伏見甘(ふしみあま)のような甘み種のトウガラシもあります。また、辛み種のトウガラシも、種類によってマイルドなものから刺激の強烈なものまで、その辛さの度合いはさまざまです。
 こうしたトウガラシの辛みを左右するのは、カプサイシンの量ではなく、その分子構造。
 カプサイシンを構成する分子の鎖が長すぎも短すぎもせず、適当な長さになったとき、人間は強く辛みを感じるのです。
 そして、この辛みの度合いを示す単位を「スコヴィルユニット」といいます。これはトウガラシに含まれるカプサイシンを水で薄めていき、どの濃度まで辛みを感じとれるかで、辛みの度合いを判断する数値です。
 ちなみに、日本の代表的辛みトウガラシの鷹(たか)の爪(つめ)は、スコヴィルユニット3万~5万。これは世界的にみても辛い部類に入る数値です。ただ、もっとも辛いものになると、スコヴィルユニット10万~35万に達するといいますから、その辛さは想像を絶するレベルです。
 トウガラシを日ごろからふんだんに使う韓国やメキシコでは、料理に応じて、辛みのマイルドなものから、強烈なものまで、細かく使いわけているといいます。
 店でトウガラシを買うときに、スコヴィルユニットを調べるわけにはいきませんが、辛みの強いトウガラシやマイルドなトウガラシを使いわければ、辛い料理の奥行きが、大きく増すことはまちがいありません。
古くから、トウガラシには食欲増進、健、疲労回復、発汗や血行の促進といった効果があることが知られています。食べると体があたたまるので、冷えが原因の肩こり、腰痛(ようつう)の解消にも利用されてきました。これらの効果はトウガラシ特有の辛さのためで、その辛み成分がカプサイシンです。
 カプサイシンの辛みは、舌や胃を刺激して、食欲を増す効果をもつのは、ご存じのとおり。しかし、それだけではなく、中枢神経を刺激してアドレナリンの分泌(ぶんぴつ)をうながし、エネルギーの代謝(たいしゃ)をさかんにする働きがあります。そのため、コレステロールなどの体脂肪分解がうながされて、運動したときと同様に熱エネルギーへと変換されるのです。
 これらの作用によって、カプサイシンは食欲を増しながら肥満の予防にも役立つというわけ。また、強精、老化防止にも効果があります。
 このほか、毛細血管を収縮させて心臓の動きを活発にしますが、その際、血圧をあまり上昇させないのも特徴的な作用。辛みをじょうずに利用すれば塩なしでも料理がおいしく感じられ、結果的に減塩にも有効なので、適量の使用は高血圧の人にもおすすめできます。さらに、最近では免疫力増進効果もあり、かぜなどの予防に有効ともいわれています。
 トウガラシは身近で安価な材料ですが、一度に大量にとると刺激で胃を荒らすこともあるため、むやみな使い方は避けたほうが賢明。目の充血しやすい人、痔疾(じしつ)の人、アトピー性皮膚炎の人も避けたほうがいいでしょう。
 トウガラシは、その品種によってカプサイシンの含有量に差があり、それは辛みの程度に現れます。ちなみに、国産品ではタカノツメがもっとも辛いとされています。

出典 小学館食の医学館について 情報

大辞林 第三版の解説

トウガラシの果皮に含まれる辛味成分。食欲の増進、脂肪の分解、血圧の抑制などの効果がある。

出典 三省堂大辞林 第三版について 情報

化学辞典 第2版の解説

(E)-N-(4-hydroxy-3-methoxybenzyl)-8-methyl-6-nonenamide.C18H27NO3(305.40).ナス科Capsaicumの果実に含まれ,トウガラシの辛味の原因物質である.白色のりん片状結晶.融点65 ℃,沸点210~220 ℃(1 Pa).λmax 277,281 nm(log ε 7,2.5).エタノール,エーテル,クロロホルムに易溶,水に不溶.皮膚などの局所に適用すると発熱,痛み,炎症が生じる.脊髄にある中枢側末端から神経伝達物質の放出を促進させる.[CAS 404-86-4]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

世界大百科事典内のカプサイシンの言及

【トウガラシ(唐辛子)】より

…果色はカプサンチン,β‐カロチン,ビオラキサンチン,クリプトキサンチンおよびカプソルビンなどのカロチノイド系色素による。辛味成分はカプサイシンほか数種の近縁化合物の混合体で,種子,果皮および胎座部や茎葉に含まれている。 トウガラシについては,古く江戸時代から種々の品種が記載されている。…

※「カプサイシン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報

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