カモンイス(その他表記)Luis Vas de Camões

デジタル大辞泉 「カモンイス」の意味・読み・例文・類語

カモンイス(Luís Vaz de Camões)

[1524~1580]ポルトガル詩人バスコ=ダ=ガマインド航路発見を軸とする愛国的大叙事詩ウス‐ルジーアダス」により、偉大な国民的詩人とされる。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「カモンイス」の意味・読み・例文・類語

カモンイス

  1. ( Luís Vaz de Camões ルイース=バズ=デ━ ) ポルトガルの詩人。バスコ=ダ=ガマのインド到達を主題にして、ポルトガルの歴史を描いた大叙事詩「ウス‐ルジーアダス」で知られる。(一五二四頃‐八〇

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「カモンイス」の意味・わかりやすい解説

カモンイス
Luis Vas de Camões
生没年:1525?-80

ポルトガル文学史上最大の詩人。しかしその伝記は,ほとんどが推測,しかも〈願望的な推測〉の域を大きく越えていない。生まれたのはおそらくリスボン。没落貴族の子であった彼は,当時の知識人と比較しても群を抜くほど該博な知識を持っていたが,いつ,どこでそれを身につけたかは明らかでない。コインブラ大学との説もあるが,確実ではない。1553年にインドへ行き,おそらく69年にリスボンへ戻る。東洋における16年間は,悲惨と貧窮と落胆の連続であった。そのうえ投獄の憂目にさえあう。物質的な面から見れば,東洋における生活はほとんど無意味なものであったが,不朽の名作と言われる叙事詩《ウズ・ルジアダス--ルシタニアの人びと》(1572)をこの間に書きあげている。しかし,この叙事詩刊行後も彼の生活は物質的に好転することはなく,貧窮のうちに死をむかえた。貧しさこそ終生彼のもとをはなれることのなかった〈親友〉と言えよう。1行が10音節,1スタンザが8行より成る《ウズ・ルジアダス》は,10の歌に分かれ,9000行ちかい一大叙事詩である。インド航路を〈発見〉したバスコ・ダ・ガマが形式の上では中心になっているが,単にガマの航海をうたったものではない。それはホメロス,ウェルギリウスなどの古典的作品に範をとりながら,ポルトガル人の赫々たる偉業をうたいあげた雄編であり,全体に愛国の熱情が満ちあふれている。ギリシアローマ神話,ポルトガルの歴史などが詳しくうたいこまれており,この詩は彼の博覧強記ぶりの証(あかし)ともなっている。《ウズ・ルジアダス》は《神曲》や《ドン・キホーテ》に匹敵する傑作で,ポルトガル文学の巨大な遺産とされているが,彼はまた,抒情詩人としても当時第一級の人物であり,現在では《抒情詩集》として,その作品は1冊にまとめられているほどである。ほかに《セレウコ王》(1645)など3編の戯曲がある。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「カモンイス」の意味・わかりやすい解説

カモンイス

ポルトガルの国民詩人。貴族出身だが,アフリカでは片目を失い,マカオでは倭寇(わこう)と戦うなど波乱に富んだ生涯を送り,貧苦のうちに死んだとされるが,その伝記はほとんど推測の域を出ない。彼の名声を不朽にしたのは叙事詩《ウス・ルジアダス》(1572年)であるが,これはバスコ・ダ・ガマのインドへの航海を中心テーマに,建国から作者在世当時までのポルトガルの歴史をうたいあげたものである。国民精神とギリシア,ラテンの叙事詩の詩法がみごとに結合されている。
→関連項目ポルトガル語マカオロカ[岬]

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「カモンイス」の意味・わかりやすい解説

カモンイス
かもんいす
Luís Vaz de Camões
(1525?―1580)

ポルトガルの詩人。リスボン生まれ。勉学のため学都コインブラに1542年までいたと信じられている。ドン・ジョアン3世の宮廷に仕えたが、47年北アフリカのセウタへ赴き、ムーア人との戦闘で右目を失明。その後、故国に帰ったが、52年宮廷の一青年を傷つけ捕らえられ、翌年許されてインド、中国に滞留、69年リスボンに帰り、晩年は極度の貧困と病のうちに数奇な生涯を閉じた。彼の名を不朽にしたのは叙事詩『ウス・ルジーアダス』(1572)で、ウェルギリウス、ペトラルカに比肩する詩聖である。叙情詩はソネットがとくに優れ、複雑で繊細な感情を巧みに表現している。

[濱口乃二雄]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カモンイス」の意味・わかりやすい解説

カモンイス
Camões, Luís Vaz de

[生]1524.2.5. リスボン
[没]1580.6.10. リスボン
ポルトガルの詩人。コインブラで学んだと伝えられ,ドン・ジョアン3世の宮廷に出入りしたのち,1547年北アフリカのセウタに赴き,ムーア人との戦いで右眼を失う。3年後に帰国し,決闘の罪で1年間獄につながれた間に,バスコ・ダ・ガマの航海を主題に,ポルトガルの歴史的栄光をたたえた叙事詩『ウス・ルジーアダス (ポルトガル人) 』 Os Lusíadasの第1章を書き上げ,1553年ゴアを経てマカオへ向かい,そこでさらに6章を書いた。 1570年リスボンに戻り,1572年に『ウス・ルジーアダス』の初版を出版したが,貧窮と病苦のため悲惨な晩年を送った。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

山川 世界史小辞典 改訂新版 「カモンイス」の解説

カモンイス
Luís Vaz de Camões

1525?~80

ポルトガル文学を代表する詩人。北アフリカやアジアで軍人,官吏として活動するが,戦争で片目を失ったり,経済的に困窮するなど,生涯を通じて不遇であった。ヴァスコ・ダ・ガマの事績とポルトガルの歴史を神話的な構想でうたった長編叙事詩『ウズ・ルジアダス(ルススの民のうた)』(1572年)が代表作であり,ポルトガル文学不朽の名作として称えられている。抒情詩人としても卓越。

出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android