カラマツソウ(英語表記)Thalictrum aquilegifolium L.

改訂新版 世界大百科事典 「カラマツソウ」の意味・わかりやすい解説

カラマツソウ
Thalictrum aquilegifolium L.

山地草原や疎林中,また高山帯にも生えるキンポウゲ科多年草。茎は高さ80cmくらいに達し,直立し,分枝する。葉は大きく,3~4回3出複葉,小葉身は浅裂するが,鋸歯はない。裏面は白みを帯びる。葉柄の基部は葉鞘(ようしよう)になる。茎の先は大きな散房状の花序となり,7~9月ころ小さな花を多数つける。萼片白色ないし淡紅色,早く落ちる。花弁はない。おしべは長さ約1cm,花糸はふつう白色で上部は棍棒状にふくれる。多数のおしべが上の方で広がり,ちょうどカラマツ(唐松)の束生する葉のようになるので唐松草の和名がある。このおしべが早く落ちる萼片に代わって昆虫を誘引する器官となる。めしべは数個,有柄。果実は瘦果(そうか)の集りで,個々の瘦果は四つの稜が翼状に張り出し,長い柄でぶら下がる。ヨーロッパ,シベリア,中国,朝鮮より日本(琉球諸島を除く)に分布する。

 カラマツソウ属Thalictrum(英名meadow rue,silverweed)は約250種があり,北半球に広く分布し,マレー諸島では南半球にまで広がっている。日本には16種がある。アキカラマツT.minus var.hypoleucum(Sieb.et Zucc.)Miq.は花は淡緑黄色,おしべは垂れ下がり,花糸は糸状,瘦果は無柄。薬用にする。ミヤマカラマツT.filamentosum Maxim.は高さ30~50cm,花は淡紅色,おしべの花糸は広がる。瘦果は柄があり扁圧される。ツクシカラマツT.kiusianum Nakaiはミヤマカラマツに似るが小型で全体が紅色を帯びる。栽培されるが,原産地は不明。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「カラマツソウ」の意味・わかりやすい解説

カラマツソウ
からまつそう / 唐松草
[学] Thalictrum aquilegiifolium var. intermedium Nakai

キンポウゲ科(APG分類:キンポウゲ科)の大形多年草。茎は直立し高さ0.5~1.2メートルで中空。葉は3~4回3出複葉、小葉は灰緑色で倒卵形。托葉(たくよう)と小托葉がある。花は7~9月、上部がやや平らな複散房花序に多数つき、細長い卵形の萼片(がくへん)があるが早く落ち、花弁はない。多数の雄しべが白いため、花は白くみえる。果実は痩果(そうか)、楕円(だえん)形で先がとがる。北海道と本州に分布し、暖帯から亜寒帯の草原に生える。アキカラマツは本種によく似るが、花は淡黄色で、痩果の基部は狭くならない。本州、四国、九州および中国東北部、シベリアなどには果実が倒卵形で先がとがらない別変種マンセンカラマツがある。カラマツソウ属は北半球に約150種があり、日本にはそのうち20種が分布する。形態的には共通して、外見がカラマツ(別名ラクヨウショウ)の短枝に似た花をつけ、3出複葉で、果実が痩果であるという特徴をもつ。

[門田裕一 2020年3月18日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カラマツソウ」の意味・わかりやすい解説

カラマツソウ
Thalictrum aquilegifolium; meadow rue

キンポウゲ科の多年草。山地に生える。高さ 90cmぐらいで,全体に無毛,緑白色。3回3出羽状複葉が互生する。茎の下方の葉は有柄,上方では無柄となる。小葉は広卵形で先端が丸く,3,4裂する。7~8月に,茎の先端に多数の枝を出し,散房花序をつける。花弁はなく,白い花弁状にみえる4~5個の萼片がある。長いへら型のおしべが直径 1.5cmぐらいの輪状に集る。めしべは数個。痩果は長さ約 7mmの狭卵形。同属の種にミヤマカラマツ,アキカラマツなどがあり,北半球や南アメリカにも近縁種がある。

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百科事典マイペディア 「カラマツソウ」の意味・わかりやすい解説

カラマツソウ

北海道〜九州の山地〜高山の草地にはえるキンポウゲ科の多年草。茎は直立し,高さ1mになり,葉は3〜4回3出複葉で,数枚つき,基部には托葉がある。夏,茎頂に多数の白い花が散房状に密につく。萼片は4〜5個で長さ約4mm,花弁はない。おしべはカラマツの短枝にも似て,花糸が目だつ。近縁のアキカラマツは山野にはえ,花は小さく,淡緑色。シギンカラマツはアキカラマツに似るが,花は白い。ミヤマカラマツは深山の林中にはえ,全体に小さく,花は白い。

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