イギリスのカンタベリーにある大聖堂。正式名称は,クライストチャーチChristchurch。アングリカン・チャーチの大本山で,イギリス最初のゴシック様式大聖堂。起源は6世紀末にさかのぼる。12世紀後半より巡礼地となったが,1174年の火災でノルマン期の内陣部が焼失。フランスより工匠ギヨーム・ド・サンスGuillaume de Sens(サンスのギヨーム)が招かれて修復に当たり,フランスのゴシック様式を初めてイギリスに導入した。イギリスの工匠ウィリアムが引き継ぎ,1184年完成。ベル・ハリーBell Harryと呼ばれる中央塔は15世紀末の完成で,高さ72m。西正面は双塔と身廊妻壁全面のランセット窓lancet window(鋭尖窓)で飾られ,塔や飛梁上に林立する小尖塔群とともに,荘重な垂直様式perpendicular styleを示す。イェーベルHenry Yeveleにより1410年に完成した身廊はファン(扇状)・ボールトで覆われる。内陣,周歩廊,トリニティ教会と順次床が高くなり,東端の円形平面殉教者祭室(コロナ)に終わる。全長約160m。窓の一部に12,13世紀のステンド・グラスが残され,東側交差廊とイギリス最大の地下祭室に,ノルマン様式をとどめる。
執筆者:藤本 康雄
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ロンドンの東南東85キロメートルのカンタベリーにあり、イギリス国教会(イングランド教会)の総本山になっている大聖堂。カンタベリーが6世紀にサクソンのケント王国の首都になり、イングランド最初の司教座(のちに大司教座に昇格)が置かれたのが起源。チョーサーの『カンタベリー物語』に生き生きと描かれているように、中世には巡礼地としても人気が高かった。現在の大聖堂は1070年から1503年にかけて造営され、東西二重の袖廊(そでろう)があるところなどにロマネスク式の原形が認められるが、全体としてはイギリス後期ゴシック独特の垂直様式の要素が強い。西袖廊の左側に、1170年に殉教した大司教トマス・ベケット記念の場がある。1988年に聖オーガスティン大修道院と聖マーティン教会とともに世界遺産の文化遺産として登録されている(世界文化遺産)。
[紅山雪夫]
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