カンラン

改訂新版 世界大百科事典 「カンラン」の意味・わかりやすい解説

カンラン (橄欖)
Chinese olive
Canarium album(Lour.)Raeusch.

高さ数mから20m,時に30mになるカンラン科の常緑樹木で,インドシナから中国南部に分布する。果実が食べられるので中国や台湾で栽培され,鹿児島,沖縄地方にも植えられていることがある。葉は互生し,長さ40~50cmの奇数羽状複葉で,3~8対の小葉をもつ。小葉は長さ6~14cm,幅2~5cmの楕円形で全縁。雌雄異株。花は淡黄白色,直径数mmの小花で,葉腋(ようえき)から出る円錐花序または総状花序に咲く。果実は長さ約3cm,直径約2cmの楕円球形の核果で乳白色に熟する。種子欖仁(らんにん)といい,ややアーモンドに似た風味をもつ。生食し,また油でいためて中国料理に用いる。果肉も生食,塩漬,砂糖漬,薬酒として利用する。モクセイ科のオリーブに橄欖の字をあてることがあるが,これは誤用

 カンラン属Canariumは約75種の樹木からなり,大部分が東南アジア~太平洋地域に分布する。ウランC.pimela Leenh.など何種類かの果実はカンラン同様食べられる。マニラエレミ(英名Manila elemi)C.luzonicumBl.)A.Grayの樹脂は香(こう)や印刷インク,ワニスの原料に用いられる。カナリヤノキC.vulgare Leenh.は樹高45mに達する高木で,公園樹,街路樹としてよく植えられ,ジャワ島ジャカルタ郊外のボゴール植物園の並木は有名である。

双子葉植物。16属約550種の樹木からなり,世界の熱帯を中心に分布し,ニガキ科センダン科ウルシ科近縁である。しばしば樹体の各部に樹脂を分泌する組織がある。そのため芳香をもった樹脂を出す。樹脂は香,薬用,油脂原料に用いられる。聖書にも出てくる乳香(にゆうこう),没薬(もつやく)はそれぞれカンラン科ボスウェリアBoswelliaおよびコンミフォラ属Commiphoraの樹木の樹脂で,古くから祭式の香として用いられた。また木材としても広く利用され,なかでも熱帯西アフリカのオクメAucoumea klaineana Pierre(英名okoume)の材は淡色,軽軟で加工しやすい良材である。
執筆者:

カンラン (寒蘭)
Cymbidium kanran Makino

昔より東洋ランの1種として栽培されているやや大型の地生ラン。シュンランと同属だが,花茎に花が多数つく。小型の偽球茎があり,その上に葉を3~6枚,叢生(そうせい)する。葉は線形で常緑。花茎は偽球茎の基部より側生し,高さ30~60cm。12~1月に,3~十数花を疎につける。花は芳香があり,紫色を帯びた緑色,径約6cm。萼片は開出し,線状披針形,長さ約3~4cm。花弁はやや短く,線状披針形,長さ2~3cm。唇弁はより短く,やや肉質で反り返り,通常,赤褐色の斑紋がある。距はない。花粉塊は蠟質で2個。本州南部,四国,九州,琉球,台湾の常緑樹林の林床に生える。観賞用に栽培され,花形や花色に変異が多く,気品のある花と香りを観賞する東洋ランの代表種である。紅・黄・白色などの複雑な色をもつ花変りや,葉面に覆輪や縞などの斑をもつ葉変りがあるが,カンラン独特の気品ある東洋的調和美は,全国的にその愛好者をひろめ,各地に熱心なランのグループがつくられている。山採りのちょっとした変異品にも品種名がつけられ,稀品(きひん)は高価で取引されていて,自生地の多くは壊滅してしまった。株分けで繁殖し,植替えの時期は春(4~5月)または秋(10月)。少し日陰の方が葉やけせず,美しい葉も観賞できる。

 近縁で多花性のものに,ホウサイラン(報(豊)才蘭)C.sinense(Andr.)Willd.やスルガラン(駿河蘭,別名オラン(雄蘭))C.ensifolium(L.)Sw.があり,どちらもカンランよりも,より温暖な九州西部やそれより南に分布する。また,カンランとシュンランの自然雑種と推定されるハルカンランCnishiuchiana Makinoが高知県から知られている。中国大陸南部に分布するスルガランやヘツカランC.dayanum Reichb.fil.var.austro-japonicum Tuyamaの類似種も,ソシンラン(素心蘭)などの名のもとに日本に導入され,珍重されている。
執筆者:


カンラン (甘藍)

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のカンランの言及

【ラン(蘭)】より

…【井上 健】
【洋ランと東洋ラン】
 日本の園芸界では,ラン科植物を東洋ラン,洋ラン,和ランなどに分けて取り扱っているが,これは植物学上での分類ではない。 日本や中国に原産し,古くから栽培されていたカンランやシュンランは東洋ランと呼ばれる。それに対して洋ランはおもに明治以後,欧米を通じて日本に導入された花の観賞価値の高いラン科植物を指し,それらの中にはフィリピン,タイなどの東洋原産のラン科植物も含まれる。…

※「カンラン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」